成人においては、心不全のβ-ブロッカー療法はよく確立されている。しかし、小児の心不全でβ-ブロッカーの使用を支持するデータはほとんどない。内科医は成人の心不全で得られた知見をそのまま小児患者に適用することはできない。この理由として小児から成人するにつれ心筋細胞が成長することや、薬物代謝と排泄における両者の違いが挙げられる。
現在進行中のオープンな治験から、小児の心不全におけるカルベジロールの薬理と臨床効果に関する新しいデータが得られている。Laer博士は、心機能のさらなる改善はないが臨床的には安定している小児患者を含んでいるこの治験概要について述べた。10人は拡張型心筋症で、6人は先天性心疾患に引き続くうっ血性心不全であった。

全ての小児患者はACE阻害薬、利尿薬、ジギタリスを含む標準的な心不全治療を受けた。験者は0.09mg/kgの試用量でカルベジロールの経口投与を開始し、0.35mg/kg
1日2回の目標量まで増量した。β-ブロッカー療法は少なくとも半年間は継続した。
治験を最後まで続けることの出来た12人の小児患者(生後6ヵ月から19歳までの年齢を含む)で心機能が改善した。平均駆出率は37%から52%まで有意に増加した。心不全症状が改善するにつれて、小児心不全の重症度を表すスコアの平均はおよそ5点から3点まで有意に減少した。
薬物動態学的解析によりカルベジロールの排泄は年齢依存性に増加(半減期は年齢依存性に減少)することがわかった。さらにその上、最大心拍数を半分に減少させるカルベジロールの濃度は若年患者ほど低いということがわかった。
これらの知見が得られたため、博士らのチームは今や若年患者で増量の時期を4週間から2週間に短縮している。将来的には目標量を増加するつもりでいる。そうすれば恐らくより臨床的な効果が期待できるであろう。
この治験の結果が意味するところは大きいが、登録患者数が少ないし、対照となるものがない。博士は、研究者らはより大規模な無作為対照治験でカルベジロールの効果を評価すべきだと言った。そのような大規模臨床試験が米国で今始まっている。
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