これまでの研究で、心筋梗塞後のβ遮断薬治療により死亡率、突然死率そして致命的ではない再梗塞率の低下を含んだ長期的恩恵が得られることが示されてきた。しかしながら、これらの試験は治療法として血栓溶解療法やACE
阻害薬が使用される以前の時代に施行されたものである。さらに、左室機能の評価は行われなかったし、通常、心不全患者は除外されていた。
Sharpe博士は左室機能不全を伴った心筋梗塞患者の罹患率と死亡率に対するカルベジロールの効果に関して新しいデータを示した。これらの患者はACE阻害薬の使用を必要とするプロトコールに従って治療された
。

データはプラセボ対照無作為二重盲検によるCAPRICORN試験からのものである。この試験は左室駆出率40%以下の急性心筋梗塞患者2,000名近くを含んでいる。これらの患者のほとんど全てがACE阻害薬を投与されていた。
2001年5月にLancet誌に報告されたように、カルベジロールは総死亡率を23%(15%から12%まで)低下させた。このβ遮断薬は総死亡率と心血管疾患による入院の総和も8%
低下させた。これらがこの研究の最初のエンドポイントである。

口演において、博士はカルベジロールが心血管疾患による死亡率を25%(14%から11%まで)低下させることを明らかにした。心筋梗塞の再発は6%から3%に半減した。
全ての主な心血管イベント(心血管疾患死、致命的でない心筋梗塞、心不全による入院)のエンドポイントの総和は、カルベジロール投与群で19%低下した。
患者にとっての恩恵は年齢、性別、駆出率、心筋梗塞の部位、狭心症あるいは心筋梗塞の既往、糖尿病や心不全の有無、その他の因子に左右されなかった。

さらに、博士はこれらのハイリスクの左室機能不全患者43名に対する治療によって、1年あたり1名の死亡を防ぎうることを報告した。ACE阻害薬単独の治療が必要とされる人数はこの患者群と同じだが、CAPRICORN試験ではこの恩恵はACE阻害薬による恩恵にさらに上乗せするものであった。
ある参加者が、これらの所見はこの患者群におけるβ遮断薬のクラス効果を示すものかという質問をした。博士はこの可能性を否定はしなかったが、データはこの状況においてのみカルベジロールの使用を支持するものであることを強調した。
CAPRICORN Sub-study の結果
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カルベジロール群
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対照群
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総死亡率 |
12%
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15%
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心血管疾患による死亡率 |
11%
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14%
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再発心筋梗塞 |
3%
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6%
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