僧帽弁閉鎖不全症で、左室駆出率が60%未満の患者は、診断後10年以内には約39%が死亡する。その年間死亡率は1.8%である。左室駆出率が50%未満の患者では突然死の死亡率は13%である。また、左室駆出率が術後生存率の予測因子となる。左室駆出率が50%未満では極端に生存率は低く、60%以上ではそれに比較してより高い生存率を認めるが、50〜60%ではやはり明らかに死亡率は高い。また左室収縮末期径が45mm以上の場合、術後の左室機能障害は著明に増大する。Sarano博士が述べるには、左室駆出率が60%以上で、左室収縮末期径が45mm以下の症例は内服管理が受け入れられるとする保存的考えは実のところ妥当ではない。なぜなら突然死で死亡する症例のほとんどは無症状で良好な左室機能を有するからである。また、Mayo
Clinicでの600例における僧帽弁閉鎖不全症患者の成績では、左室機能障害はより早期に始まっているとの報告がある。
難しい点は、内服治療によってもたらされた明らかな改善によって内科医がごまかされる点である。しかし、classV〜Wの症状が出現するまで待つことは、軽度の症状あるいは無症状の患者に比べて10倍高い5%の手術死亡率となる。また、術前の症状が重篤である患者の術後長期の死亡率はclassTあるいはIIの患者と比較して高いのである。

僧帽弁閉鎖不全症は進行性疾患で、心エコーによって示されるように、1年あたり逆流量が7〜8mlずつ増加していく。15年以内にclassTあるいはIIの患者のうち97%が外科的手術を必要とするだろうし、58%は心不全の増悪を来すであろう。しかしながら、これらの患者に対する外科的治療は彼らの死亡率リスクを予想された範囲内に戻すことになる。

また、伝統的な知識に反して、僧帽弁形成術は弁置換術より望ましく、前尖と後尖の逸脱に対し形成術は弁置換術と比較してよりよい長期生存率が得られる。過去10年の技術的な向上により再手術の必要性は著しく減少し、早期の外科的治療計画を支持できるようになっている。
博士は、弁が修復可能であれば、左室駆出率が60%以上で患者の症状がclassTあるいはIIの時期に行うのが最適の結果を示すと結論づけた。最新の考え方は、僧帽弁逆流量を評価し、「今インターベンションすること」を考えることである。
|