心臓保護試験−シンバスタチンと抗酸化薬
Heart Protection Study - Simvastatin and Antioxidants

Rory Collins
University of Oxford
Oxford, UK


心血管系疾患のリスクが高い患者において、コレステロール低下作用を持つ薬物による治療が長期にどのような効果を持つかは明らかに示されていない。さらに、抗酸化薬であるビタミンの追加投与がこれらの患者にとって有効か有害かという問題も未解決のままである。

心臓保護試験では69のセンターから登録された20,536例の患者を対象にして、これらの問題に関する検討が行われた。患者はシンバスタチン40mg/dayかプラセボに無作為に割り付けられた。さらに、それぞれの患者群で半数は複合ビタミン剤(ビタミンE、ビタミンC、ベータ−カロチン)あるいはプラセボが投与された。

ハイリスク患者は多岐にわたっており、冠動脈疾患、その他の閉塞性動脈疾患、糖尿病、高血圧患者が含まれていた。また、多くの女性、高齢者、コレステロール値に問題のない症例もあった。これらのグループに対する治療効果に関するデータは現在ほとんどない。

5.5年に及ぶ治療にもかかわらず、ビタミンには有害であるという証拠もなかったが、何ら臨床的有効性は認められなかった。結論として言えることは、患者が望むなら安全性を憂慮することなくビタミンを服用しても良いということである。

スタチン治療は総コレステロールレベル(1.3mmol/L)とLDLコレステロール(1.0mmol/L)を平均して著明に低下させた。コレステロールを低下させる治療は主要な血管性イベントを全ての患者群で少なくとも4分の1は減少させた(この減少は服薬がきちんと行われなかった患者を除外すると実際には3分の1になる)。

心臓保護試験によって初めて、スタチン治療は糖尿病患者において、例え冠動脈疾患のリスクがない場合でも有効であるという明確なエビデンスが示された。

この試験はまた、女性における(この試験には約5,000例の女性患者が登録された)コレステロール低下治療に関する初めての大規模試験である。Collins博士は、今やスタチンが少なくとも3分の1の女性患者においてイベント発生のリスクを減少させるという直接的なエビデンスが得られた、と語った。

この試験の最も注目すべき所見は、おそらくこれらハイリスク患者に対してスタチンは血清コレステロールのレベルに関係なく有効であるということであると思われる。血管性イベントの減少はコレステロールが低値から正常値の患者と高値を示す患者において等しく3分の1の症例で認められている。

この所見は医療政策上極めて重要な意味を持つものである。AHAミーティングに参加した専門家たちは、コレステロールを低下させる治療を始めるのに血清コレステロール値が特定の標的レベルに達するまで待つべきではないと語った。確かに、この試験ではハイリスク患者の治療は最初のコレステロールレベルに関係なしに始められている。この治療指針は治療を著明に単純化するであろう。


レポーター:Andrew Bowser
日本語監訳:浜松労災病院院長 篠山重威