核医学画像は、過去20年の間、冠動脈疾患の検出や梗塞後の患者のrisk
stratificationにおいて重要な役割を果たしてきた。左室機能や、梗塞領域内外を問わず残存虚血の有無とその程度、心筋バイアビリティーの有無を評価する手法として現在も力を発揮している。
最近は、左室駆出率(EF)が保たれている症例は、かなりリスクの低い患者で、さらなるrisk stratificationが、有用かどうか疑わしいとされている。しかし、Dilsizian博士は、EFが悪くなり始めた患者にとっては、さらなるrisk
stratificationは適切で、臨床的に重要であると強調した。Vasodilatorを用いて行うSPECT血流画像は、退院前に安全に実施でき、且つさらなるケアーを要する患者を選別することができる。
こういった画像は、梗塞を繰り返し、EFの値の低い患者に最も有用と考えられる。再疎通療法に価する生存心筋が有るか否かを評価可能であるからだ。
この点においては、PET(positron emission tomography)は、タリウム撮像より解像度が良く、心筋組織の代謝に関するより良い情報をもたらしてくれる。空腹、安静時で検査を行い、低灌流領域にPET用トレーサー(訳者注:FDG)が取り込まれる時、その部位の代謝は、脂肪酸から糖にスイッチされている。このような症例では再疎通療法が成功すると予測される。
左室機能の回復の見込めない患者にとっても、核医学画像は将来的可能性を秘めている。これらの患者に対しては、「心筋間質にほかに何が起こっているか」という問題があるからだ。
心移植を受けた13人の患者についての研究では、核医学の結果が病理と比較検討されている。タリウムにて低灌流領域で、PETにて糖代謝が認められない領域は、明らかに心筋壊死となっていた。さらに、非梗塞領域には、画像で検出できなかったコラーゲンの層が認められた。
心室リモデリングは、アンジオテンシンIIが影響していると考えている研究者がいるが、そうであれば、ACE阻害剤はその影響を減弱し、死亡率を減らすと考えられる。
動物実験でも臨床研究でも、アンジオテンシンIIが心室リモデリングに重要な役割を果たしていることが立証されている。アンジオテンシンII(type
1)にbindするトレーサーによるPET検査も実施されているが、この検査では、アンジオテンシンIIは梗塞周囲の心筋細胞に存在していた。将来この方法でリモデリングの代謝変化の兆しをとらえ、薬物療法の結果をモニターすることも可能となるであろう。
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