心エコーの役割
Role of Echocardiography
William A. Zoghbi
Methodist Health Care System
Houston, TX, USA

冒頭、Zoghbi博士は、入院前において心電図が非典型的で鑑別診断に大動脈解離や心膜炎が含まれる場合、心エコーが有用であるということを示した。冠動脈疾患集中治療室(CCU)入院後においても、僧帽弁閉鎖不全症や心嚢水貯留による心タンポナーデ等の機械的あるいは血行動態的合併症を診断する際に、心エコーは有用である。

講演の大半は、合併症のない心筋梗塞患者の退院前のリスク評価における心エコーの役割に関するものであった。博士によれば、心エコーにより、安静時及び負荷時、両方の状態を評価することが可能である。

安静時の検査により、種々の予後因子に関する情報が得られる。それらは、左室駆出率(EF)、左室リモデリングの程度(収縮末期容積や拡張末期容積の増大)や、左室流入速度(ドップラーによる左室充満圧の上昇)などである。また、安静時検査により、多枝病変があるか、あるいは残存虚血が存在するかも判定可能である。

ドブタミン投与による負荷検査により、(低用量において)収縮予備能や、(高用量において)心筋虚血、バイアビリティが評価できる。

イタリアでの8,000人以上の患者の試験では(Nicolosi、1996)、心筋梗塞後平均12日目における心エコー検査により、不安定狭心症、梗塞の再発、死亡の予測を安全に評価できることが示された。検査は、高用量ドブタミン負荷時の左室壁運動異常により、心筋虚血を評価した。

Carlosらによる約200人の患者の試験では、安静/負荷心エコー(負荷は低用量及び高用量ドブタミン投与による)は、心電図、臨床データ及び残存心機能を総合的に評価するよりも、患者の予後を予測するのに優れていることが示された。

博士は、また、心筋梗塞の初期治療により心エコーの役割は変化することを示した。血栓溶解療法を受けた患者では、心エコーによる画像診断は一般的に極めて有用である。血管形成術を受けた患者では、他の冠動脈に病変がある場合を除いては、一般的に有用性は低い。

心筋コントラストエコーは、将来的に有望であり、左室機能や心筋血流の評価において重要な役割を担うであろうと、結論づけられた。


レポーター:Elizabeth Coolidge-Stolz, MD
日本語監訳:京都大学医学研究科循環病態学 木下 愼