心房細動の非薬物療法
Non-Pharmacologic Treatment of Atrial Fibrillation
J. Marcus Wharton
Duke University Medical Center
Durham, NC, USA

現在用いられている心房細動を治療するための非薬物療法は、心拍数のコントロール、洞調律の維持、心房細動が発生する部位に対するアブレーション(焼灼術)に分類される。心拍数コントロールは2つの方法によって行われる。ぺースメーカーを植え込んで房室結節をアブレーションするか、ペースメーカーを植え込まずに房室結節(の伝導)を修飾するかである。洞調律の維持は補助的なペーシングや植え込み式心房除細動器、外科的なメイズ手術そしてカテーテルアブレーションによって行われる。

房室結節に対するアブレーションは即ち完全房室ブロックを作成することになるので、心拍数を保つためにはペースメーカーの植え込みが必要となる。このテクニックは患者の症状をコントロールし、生活の質(QOL)を改善し、抗不整脈薬の使用頻度を減らし、入院したり外来を受診する回数を少なくする。房室結節を修飾するというのは、ちょうど完全房室ブロックを作らない程度に房室結節の伝導を遅くすることである。この理由からペースメーカーの植え込みは必要ではない。この方法はエンドポイントを決めるのが難しいため完全房室ブロックになってしまう危険がある。この2つの方法を比べた研究では、房室結節に対するアブレーションの方が、より良好に症状もコントロールできるし、病院を受診する回数も少なくなることが示された。これらの方法は、心室レートが薬物でコントロールできない患者、薬物治療ができない患者、心房細動のために心不全や狭心症、高血圧が悪化する患者、心房細動から心室細動へ移行してしまう患者、また他の合併症のために心房細動のコントロールができない患者に適応となる。

洞調律の維持は、植え込み式心房除細動器、外科的なメイズ手術によって最も良好に行われる。植え込み式心房除細動器は、心房をペーシングし心拍数を安定させる機能も持っており、これがまた心房細動の治療に役立つ。ただしこの方法が用いられるのは、心房細動や心室頻拍の頻度が少ない患者に限られる。また、メイズ手術という方法も、心房細動が起こらないようにするのではなく、あくまで一旦起こった心房細動が続かないようにする治療であるという点で限界がある。そして、最も良好に、心房細動を治癒させることのできる方法は、肺静脈と左房(僧帽弁輪部)とを電気的に分離することである。ペーシングやカテーテルアブレーションの臨床的意義をはっきりさせるには、さらに多くの研究が必要である。

心房細動の発生部位のほとんどは肺静脈であり、肺静脈を(電気的に)分離する方法は心房細動の治癒、軽快に対して90%以上の成功率がある。この方法は、肺静脈からの伝導を遮断するという方法である。発作性または持続性の心房細動で、症状があり薬物抵抗性で、器質的疾患がほとんどないか中程度までの患者がこの方法の最もよい適応である。 Wharton博士は、アブレーションによる治療によって将来的にさらに多くの心房細動が治癒されることを信じている。


レポーター:Andrea R. Gwosdow, Ph.D.
日本語監訳:京都大学医学研究科循環病態学 二宮智紀