血栓内膜摘除術:誰にいつ施行するか?
Thromboendarterectomy: Who and When?

Lewis J. Rubin
University of California at San Diego
San Diego, CA, USA


肺血栓塞栓症は慢性血栓塞栓性肺高血圧症とも呼ばれるが、肺動脈壁に1個以上の凝血塊を有する患者に起こる。これら凝血塊は薬物治療には不応性であり、内膜摘除術の複雑な処置を通じて外科的にのみ除去しうる。全世界で年約350例の血栓内膜摘除術が施行されている。

Rubin博士の説明によると、この疾患を有する患者は、肺高血圧症に類似し説明のつかない呼吸困難や右心不全の徴候を含む徴候や症状を示す。それに先だって急性肺塞栓症の徴候や症状が見られる例は少ない。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症を診断するのに使われる手技は、胸部レントゲン、心臓超音波検査、肺換気血流スキャン、CTスキャン、そして肺動脈造影である。心臓超音波検査は肺高血圧症の存在を確定する。肺換気血流スキャンはこの疾患を有する患者では常に異常を示し、その存在を示唆する。胸部レントゲンは主肺動脈と慢性凝血塊をよく映し出す。肺動脈造影では凝血塊間の繊維性結合が見られる。それによって肺の著しい血流低下と造影欠損が見られる。これらの特徴によってこの疾患が手術に反応性であるかどうか決定される。

内膜摘除術は、外科的に到達可能な慢性に組織化された塞栓を有する患者に対する選択の一つである。外科的に到達可能とは、塞栓の大部分が肺動脈の枝に存在することを意味する。末梢の疾患は手術出来ない。凝血塊の場所はバルーン閉塞により同定しうる。この手技は血管抵抗を評価するのに使われ、上流の血管抵抗と下流の血管抵抗を分離することが出来る。上流の血管抵抗を有する患者のみがこの手技の恩恵を得る。

この手技に最も適した患者は、少なくとも6ヵ月以上症状を有する慢性疾患で、4〜5単位の肺抵抗を有する肺高血圧があり、手術不可能な心疾患を併発していない患者である。高齢者に対する手術は禁忌ではないが、そのリスクは考慮されるべきである。

内膜摘除術を完全に施行することによって最良の結果が得られ、正常な肺血管抵抗、肺動脈圧、改善した心拍出量、改善した右室機能、肺動脈圧が測定される。患者を注意深く選択すれば、手術によって治癒可能である。内膜摘除術に最も一般的に見られる合併症は再灌流に伴う肺浮腫であり、手術後24時間以内に出現し数日間継続する。内膜摘除術による死亡率は経験を積んだ施設では全患者の6〜8%である。


レポーター:Andrea R. Gwosdow, Ph.D.
日本語監訳:京都大学医学研究科循環病態学 簗詰徹彦