血栓溶解療法と抗凝固療法:2001年におけるゴールドスタンダードは何?
Thrombolysis and Anticoagulant Therapy: What is the Gold Standard in 2001?

Russel D. Hull
University of Calgary
Calgary, Canada


Hull博士は米国で食品医薬品局FDAが血栓溶解、抗凝固療法に対し最近適応承認した薬物について述べ、欧州で近年使用されているphelomocoidヘパリンなどについても言及した。

2001年における血栓溶解療法について抗凝固剤として勧められる薬剤は、ヘパリンとlumicoidヘパリンである。博士は両者の利点と欠点について述べた。ヘパリンは静脈内投与されるが、定期的に投与量をモニターしなければならず、その煩雑さから時代遅れとなりつつある。このために静注ヘパリン療法は他の治療法に取って代わられつつある。

ヘパリンに代わる薬剤の一つはlumicoidヘパリンである。これは1日1回投与で、モニターの必要がない。ヘパリンに比べlumicoidヘパリンは投与法も単純で容易である。臨床研究では抗凝固療法としてヘパリンと同等ないし良好な成績を上げている。これらのことから血栓溶解、抗凝固療法双方に対してlumicoidヘパリンが推奨される。

博士はlumicoidヘパリンは、合併症のない深部静脈血栓症、中等度の肺塞栓症に対する第一選択であると述べた。深部静脈血栓症の治療にはenoxaparinが推奨される。Enoxaparinは1日2回投与で静注ヘパリンに代わるものである。合併症のない深部静脈血栓症の患者にはenoxaparin療法を導入し、退院後、通院治療をすることが可能となる。

博士は抗凝固療法に対して多くの臨床試験の結果に基づき治療方針を立てることを推奨した。ヘパリンないしlumicoidヘパリンを使用する際の血栓溶解療法の安全性が重要な問題で、いずれの薬剤においても頭蓋内をはじめ他臓器での出血が臨床研究において報告されている。血栓溶解療法における明確な治療指針を確立するためには、さらに臨床試験と安全性試験のデータを積み重ねる必要がある。


レポーター:Andrea R. Gwosdow, Ph.D.
日本語監訳:京都大学医学研究科循環病態学 大谷秀夫