左室補助循環装置は心臓移植を必要とする患者でドナーが直ぐに間に合わないとき、一時的な対応処置としては明らかに有効である。これらの患者では生活の質がある程度改善し、合併症も許容範囲の中に留まっている。
しかし、臨床家にとって末期心不全患者の長期治療における左室補助循環装置移植の真価は不明のままである。
Rose博士のグループはうっ血性心不全の治療における長期の機械的補助の効果を検討するために無作為臨床試験を企画した。このトライアルはREMATCH試験(Randomized
Evaluation of Mechanical Assistance for the Treatment of Congestive
Heart Failure:うっ血性心不全に対する機械的補助の無作為評価)と呼ばれるものである。New England Journal
of Medicine誌はREMATCH試験結果の初期の報告をインターネット(www.nejm.org)に掲載している。
REMATCH試験で対象とした患者は末期心不全を有するが心臓移植の適応からはずれる129例である。患者はThoratec Vented
Electric Heartmate装置による治療群と、専門家の指導による至適内科的治療を行うコントロール群に無作為に割り付けられた。
博士のグループは左室補助循環装置を装着した患者では2年間の観察期間中に死亡率が33%減少すると仮定した。ところが、試験の結果からは補助装置群で48%の死亡率の減少が認められた。1年生存率はコントロール群で25%であったのに対して装置群では52%、2年生存率は8%に対して23%であった。

彼らは装置装着群における生活の質は、コントロール群に等しいか、それを凌ぐものと期待していたが、事実、組み入れ後1年目の生活の質はBeckうつ病項目(Depression
Inventory)やNew York心臓協会心機能分類などのスケールで有意な改善を示した。

装置を装着された患者では確かに合併症の発生率は高かった。このグループにおける重大な合併症の発生頻度はコントロール群の2.35倍であった。合併症の大部分は感染、出血、または装置の機能不全である。
それにもかかわらず、研究者は、この装置で1,000人の患者を治療した場合、1年間で270の命が救われるであろうと推測している。この効果はアンジオテンシン変換酵素阻害薬やβ遮断薬の約4倍に達し、急性心筋梗塞に血栓溶解療法を施行する効果の30倍になるという。
博士は、これらの結果によって、医師が何10年間も心に抱いてきた希望、移植可能な人工心臓ポンプが命を長らえ、その質を高めることが出来るようになるという希望が検証されたと語った。
この治療は160,000USドルまたは心臓移植に匹敵する費用がかかると推測される。しかし、状況はまだ予備的な段階で、研究者たちは今後、進行性心不全の治療として費用/有効性を明らかにしていかねばならないと考えている。
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