最新の臨床試験のセッションでBristow博士はCOMParison of MedicAl,
ResynchronizatioN, and DefibrillatION Therapy
in Heart Failure(心不全における薬物療法、再同期、および除細動の比較:COMPANION)試験の予備的結果を発表した。この試験では心不全を有しQRS幅が増大している患者で再同期療法単独および植え込み式除細動器との併用効果が比較された。この重要な臨床試験のもともとの仮説は、どちらの治療でも有病率と死亡率が減少するであろうというものであった。
対象としたのはNYHA機能分類でIIIまたはIV度の慢性心不全を有し、QRS幅が130msec以上に増大している患者であった。試験登録にはさらに、患者は過去12ヵ月以内に心不全で入院治療を受けた既往があるということが条件とされた。
患者は1:2:2の割合で次の3群に割り付けられた。第1群は心不全の至適薬物治療のみの投与である。至適薬物治療とは、利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬またはARB、スピロノラクトン、および必要に応じてdigoxin投与をいう。第2群ではこの至適薬物治療に加えて両心室ペーシングによる再同期療法が行われた。第3群では至適薬物治療と再同期療法に加えて、植え込み式除細動器が使われた。

登録された患者数は1,520例で、68%が男性、平均年齢は72歳、そして75%はNYHA機能分類III度であった。1,600例以上の患者が組み入れられたが、2002年11月に有効性が明らかとなったので試験は中止されることになった。その後直ちに残っている患者の有効性のエンドポイントをまとめることは中止された。
主要エンドポイントは総死亡または緊急入院までの時間であった。このエンドポイントに関しては再同期療法群(18.6%、p=0.015)と再同期療法と除細動併用群(19.2%、p=0.005)の両者で有意な減少がみられた。
死亡率の減少は再同期のための両心室ペーシングカテーテルと除細動器を植え込まれた患者で有意に大であった。12ヵ月の死亡率には43%の減少がみられた。両心室ペーシングカテーテルのみの植え込みが行われた群では、死亡率の減少は24%であったが傾向差に止まり、有意差には達しなかった。
Bristow博士らによるさらに詳細な解析で、死亡または心不全による入院の発生までの時間の減少は再同期療法群で34%(p<0.001)、再同期療法/除細動群で38.3%(p<0.001)であることが示された。
これらはすべてまだ予備的なものであるが、この成績はこの試験の最終成績を正しく反映するものであることには間違いない。
重要な問題の一つは、いずれの植え込み治療もコストエフェクティブであるかどうかということである。この試験で医療経済的な解析はまだ行われていない。Bristow博士によるとこの2つの治療はコストエフェクティブであるという。その理由は、心不全による入院は心不全の治療費の大きな部分を占めるからである。COMPANION試験では両者とも心不全による入院に大きな減少をもたらしている。
最近の他の多くの臨床試験では至適薬物治療に追加して有効
であった治療法は示されていない。今、COMPANION試験はPitt博士が今回ACCで発表したEPHESUS試験に加えてそれを示した。これらの成績は心不全の予後改善に関して現在の標準的薬物治療で期待される以上の改善をもたらすことが可能であることを示唆するものである。
|