骨粗鬆症の閉経後女性での血清脂質ならびに臨床的心血管系イベントに対するラロキシフェンの効果
Effect of Raloxifene on Serum Lipids and Clinical Cardiovascular Events in Osteoporotic Postmenopausal Womeny
Elizabeth Barrett-Connor
University of California at San Diego, San Diego, California, USA


多くの医師にとって意外なことに、閉経後の女性にホルモン補充療法を行っても心血管系リスクを低下させないことが最近報告された。Heart and Estrogen/Progestin Replacement Study (HERS)では、ハイリスク女性がホルモン補充療法を5年受けて効果がなかった。Women's Health Initiativeでは、エストロゲンならびにエストロゲン/プロゲステロン投与を受けている女性は、心イベントがより多く生じることを報告しており、26件の小規模臨床試験のメタ分析でも同様の結果が報告されている。Barrett-Conner博士は以下のように述べている:「これらの知見に基づいて、骨粗鬆症の予防と治療に用いられている選択的エストロゲン受容体モジュレータであるラロキシフェンにも同様の効果がある可能性が認識された。われわれは3年間のMultiple Outcomes of Raloxifene Evaluation (MORE)試験の安全性データを分析した。本試験では7,705例の骨粗鬆症閉経後女性が、骨粗鬆症の治療のためラロキシフェン投与療法(60 mgもしくは120 mg)を受けていた。今回の分析では、この臨床試験で報告されている重篤な心血管系有害イベントと血清脂質レベルの変化について調べた。」

得られた結果は、両方の用量のラロキシフェンで、総コレステロールレベルとLDLコレステロールレベルが有意に低下していることを示していた。女性205例に1回以上の心血管系イベントが報告されており、これには冠動脈イベント116例、冠動脈が原因の死亡20例、死に至らなかった心筋梗塞29例、ならびに61件の脳卒中を含む脳血管系イベント89例が含まれていた。Barrett-Conner博士は、以下のように結論づけている:「この臨床試験では、ラロキシフェン投与に伴って、心血管系に害があるとか、効果があるというエビデンスは全くないというのが、‘最終的な結論’である。これには、ホルモン補充療法のいくつかの大規模臨床試験で報告されてきたような早期の害を示すエビデンスがないということも含む。"骨粗鬆症に罹患している閉経後女性で、心血管系へのリスクがあるということで、ラロキシフェン療法を避けなければならない理由はない。

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳・監修:京都大学医学研究科循環病態学 長谷川浩二


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