急性心筋梗塞の急性期における脂質低下療法によって退院後1年間の死亡率は低下
Lipid-Lowering Drug Therapy Initiated During Hospitalization for Acute Myocardial Infarction is Associated with Lower Postdischarge 1-Year Mortality
Robert P. Giugliano
Brigham and Women’s Hospital, Boston, Massachusetts, USA

Giugliano博士の指摘によると、心筋梗塞患者にスタチン系薬剤を投与することで、心血管系の事故、もしくは死亡率の減少が20〜30%得られるとしている。しかし、Giugliano博士がその指摘の根拠とする数少ない大規模臨床介入試験では、心電図上ST上昇を有した心筋梗塞発症後3ヵ月以内に患者を無作為にスタチン系薬剤による治療に振り分けて検討したものである。現状では未だ発表されてはいないが、非Q波性心筋梗塞の患者にスタチン系薬剤を用いたMIRACLトライアルではスタチン系薬剤による死亡率の低下は証明されてはいない(MIRACLトライアルは、今学術集会でも発表されている心不全患者に対するcardiac synchronizationの有用性を検討したMIRACLEトライアルとは全く別物であることに注意)。

Giugliano 博士のデータは、血栓溶解療法における各種血栓溶解薬の効果を比較したTIMI-II トライアルの登録患者14,124例から得られている。Giugliano博士によると、「我々は、入院中の急性心筋梗塞患者にスタチン系薬剤による脂質低下療法を行い、その患者のベースラインの特徴、入院中の合併症、発症一年後の死亡率を検討しました。その結果生存した患者全体の34.3%は入院中に脂質低下療法を行った患者だったのです。多変量解析前のデータによると、入院中に脂質低下療法を行った患者は、脂質低下療法を行わない患者に比し、一年後の死亡率が33%低く、さらに多変量解析による検討後でも、20%から30%低いということが確認されました。」

Giugliano博士は、コメントとして、今回のデータはあくまでも後ろ向き試験の成績であり、今後は前向きの大規模無作為試験を行い、入院中の脂質低下療法の有用性を検討する必要があり、またこのような前向き臨床介入試験のいくつかはすでに実施されているという。

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳:日本大学医学部第二内科講師 佐藤裕一
日本語監修:日本大学医学部第二内科教授  上松瀬勝男


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