血管形成術と経皮的インターベンション(観血的治療)
Angioplasty and Percutaneous Intervention
Jeffrey J. Popma
Brigham and Women's Hospital, Boston, Massachusetts, USA

Popma博士は論評のため、本年の学会で採択されたこの分野における演題399のうち、3演題を選択した。
  1. Amanda G.M.R. Sousa博士 と J. Eduardo M.R. Sousa博士は、「ヒト冠動脈におけるSirolimus-Coated StentとNoncoated Stent植え込みとの比較」を発表した。この研究では、血管形成術後の再狭窄過程の抑制を目的として、sirolimus(rapamycin)がstentの塗装(coating)として使用された。1枝病変の待機的血管形成術を必要とする30例の患者にsirolimus-coated stentが植え込まれ、15例の同様な患者にnoncoated stentが植え込まれた。6ヵ月の経過観察後、sirolimus-coated stentを植え込んだ群に新生内膜増殖は事実上見られず、この群のどの例にもedge restenosis(ステント端部狭窄)やin-stent restenosis(ステント内狭窄)はなかった。

  2. Ron Waksman博士はWashington Radiation for In-Stent Restenosis Trial for Saphenous Vein Grafts (SVG WRIST)の結果を発表した。SVG WRISTは、冠動脈バイパス手術後に大伏在静脈グラフト内のin-stent restenosisのあった120例に対するイリジウム-192(192-Ir)γ線治療の無作為二重盲検試験である。30日後、放射線治療に基づく有害事象は認められず、6ヵ月後の再狭窄率は照射群では16%であり、対照群では43%であった(P=0.004)。再インターベンションが必要であったのは、照射群で10%、対照群で48%であった(P=0.001)。本研究は、カテーテルによるγ線治療は安全であり、これらの症例の全般的再狭窄率および再インターベンションの必要性を減少させる点で効果的であることを証明した。

  3. R.H. Stables博士はStent or Surgery (SOS) trialの結果を発表した。SOS研究は、多くの臨床医の長年の疑問であった、「多枝冠動脈病変例には、stentによる血管形成術がバイパス手術よりも良いのか?」について答えるためにデザインされた前向き無作為試験である。ヨーロッパとカナダで募集された計988例の患者が、外科手術ないし血管形成術に無作為に割り付けられた。観察期間は平均2年間であった。2群間の死亡率、心筋梗塞発症率(2年時約9.5%)に有意差はなかった。両群とも有害事象は低率であった。外科手術群の死亡率が低い傾向にあったものの、死亡率が極めて低かった(2%)ために、結論を得るに至らなかった。この研究のデータの解析を続けることにより、健康管理費用や費用対効果解析に関する情報、同様に患者の愁訴やQOLに関する情報を得ることができ、恐らく将来、比較対照やclinical decision-making(臨床意思決定)のためのよき根拠となるであろう。

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳:日本大学医学部第二内科 高橋敦彦
日本語監修:日本大学医学部第二内科教授  上松瀬勝男


Copyright 2000-2013 by HESCO International, Ltd. All rights reserved.