2001年の心筋梗塞の診断を規定するものは何か?
What Constitutes a Diagnosis of Myocardial Infarction in 2001?
Kristian A. Thuygesen
Aarhus University Hospital, Aarhus, Denmark

Thuygesen博士はまず、心筋梗塞診断の歴史的背景、病態生理、診断時期、診断手順、治療戦略、疾患分類の図式など、心筋梗塞の臨床的概念の変遷に貢献している各因子について言及した。2000年、心筋梗塞の診断に関するヨーロッパ心臓病学会とアメリカ心臓病学会の合同委員会は、それぞれの学会誌European Heart Journal とJournal of the American College of Cardiologyに診断ガイドラインを発表した。タイトルは、「心筋梗塞の再定義−ヨーロッパ心臓病学会/アメリカ心臓病学会 心筋梗塞の再定義に関する合同委員会の統一見解」であった。

心筋梗塞の定義には、病理学的所見、臨床症状、生化学的指標、そして心電図所見などが含まれるが、Thuygesen博士は大きく変化した分野に焦点を絞り発表した。病理学的定義は以前と同様であり、「心筋梗塞とは遷延した虚血による心筋細胞死」である。臨床症状も同様で、基本的には労作時または安静時の20分以上持続する胸痛や狭心症状である。心電図診断についても以前のガイドライと全く変わりはない。彼は「我々が今回注目したのは生化学的指標、すでに多くの医師に知られるようになったトロポニン測定である」と述べた。

クレアチンキナーゼ(CKMB)は、生化学診断の中心がトロポニン測定へ完全に移行するまでのあいだ、今しばらくは使われ続けるだろうが、すでに心筋梗塞の診断にはトロポニン測定が好んで用いられるようになりつつある、と Thuygesen博士は述べている。トロポニン測定が梗塞診断の第一選択の生化学検査となるための要件は、より適切な標準化を早期に確立することである。現時点においては、多くのトロポニン測定法があるために、検査室ごとに異なる正常値が存在している。そのため、それぞれの医師は臨床検査室との関係を確立し、正常値と異常値とを識別する閾値や参照標準の正確な定義を知る努力をする必要がある。トロポニン測定のように極めて高感度で特異的な測定法においては、一般的には正常群の99%域または平均値から標準偏差の3倍はなれた値を閾値として用いるのが好ましい。Thuygesen博士は「どのような測定値を次の行動を起こす上での閾値として用いるのが適切なのか。我々は生化学的指標に基づく診断の限界を認識することも重要である」と結んでいる。

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳:北海道大学大学院循環病態内科学 浦沢一史
日本語監修:北海道大学大学院循環病態内科学教授  北畠 顕


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