急性冠症候群に対するクロピドグレルの作用:クロピドグレルによる不安定狭心症の再発事故に対する阻止試験(CURE)
Effect of Clopidogrel in Acute Coronary Syndromes: The Clopidogrel in Unstable Angina to Prevent Recurrent Events (CURE) Trial
Salim Yusuf
McMaster University, Hamilton, Canada

急性冠症候群や不安定狭心症例では、心筋梗塞、卒中、死亡などの心事故に対するリスクが非常に高い。アスピリンのような坑凝固療法にもかかわらず、罹患率と死亡率のリスクは著しく高い。急性の血栓は不安定狭心症の併発における重要な病理生理学的な構成要素であるがゆえに、抗血栓療法に関する調査は臨床研究において重要な領域である。CUREに登録された急性冠症候群12562例は、発症24時間以内にアスピリン+クロピドグレル 300 mg(直ちにクロピドグレルを1日1回 75 mg投与)投与群とアスピリン+プラセボ投与群に無作為に分けられた。追跡期間は平均9ヵ月であった。

この研究の結果は非常に劇的であった:プラセボ投与群に比べてクロピドグレル投与群では心血管事故が有意に減少したことを示した。死亡、心筋梗塞、卒中はクロピドグレル投与群では9.3%、プラセボ投与群は11.5%(相対リスクは 0.8; p<.00005)であった。治療抵抗性の虚血性疾患を加えると、クロピドグレル投与群では16.7%、プラセボ投与群は19.0%(相対リスクは 0.86; p<.005)であった。Yusuf博士は、「興味深いことに、プラセボ投与群とクロピドグレル投与群の生存曲線はほとんどすぐに分かれる―実際、初期治療の約2時間以内にである。」とコメントしている。生存曲線は追跡期間を通じて分かれていて、初期の有意差が期間中首尾一貫していた。安全性に関するデータも印象的であり、クロピドグレル投与群では1000例あたり3例が輸血を行い、3例が大出血を来しただけであった。プラセボ投与群とクロピドグレル投与群間では、生命を脅かす出血や脳出血は有意差を認めなかった。

結論として、Yusuf博士は、「クロピドグレル投与群では1000例あたり心筋梗塞、卒中、死亡が22例と少なく、そして心血管事故も1000例あたり28例と少ない。」と強調した。「安全性は問題なく、1000例あたり3例の輸血と3例の大出血があり、生命を脅かす出血や脳出血の増加はなかった。米国では毎年心筋梗塞が150万人に発症し、約1/3が死亡し、1/3がQ波心筋梗塞で、1/3が非Q波心筋梗塞である。従って、米国では毎年約50万人が不安定狭心症あるいは非Q波心筋梗塞に罹患する。この試験の結果によると、我々がもし急性冠症候群例全員にクロピドグレルの投与を行えば、大出血や輸血のわずかな増加を伴うが、米国では1年あたり心筋梗塞、卒中、死亡例のうち、おおよそ5万人から10万人を救うことが可能であり、世界中で行えばさらに多数の患者を救うことができる。我々は今回の結果に非常に興奮し、これらの非常にありふれた心血管問題例に対する治療法が受け入れられ、使用されることを希望している。」と述べている。

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳:駿河台日本大学病院循環器科講師 大塚雄司
日本語監修:日本大学医学部第2内科教授  上松瀬勝男


Copyright 2000-2013 by HESCO International, Ltd. All rights reserved.