再狭窄の積極的診断に関する大規模臨床試験
The Aggressive Diagnosis of Restenosis (ADORE) Trial
Mark J. Eisenberg
McGill University, Montreal, Quebec, Canada
Eisenberg博士は、北米では毎年70万例以上の経皮的冠動脈インターベンション術が施行され、その後17万5千例以上に再狭窄が生じていることを最初に指摘した。経皮的冠動脈インターベンションを受けた患者のフォローアップに関して、心臓専門医の間に以下のいずれの方法がよいか、しっかりした同意は得られていない。すなわち、再狭窄を実証するためにルーチン検査をするべきか、あるいは再閉塞の可能性を示唆する虚血の症状が発生した時にのみ検査するべきかとの二者択一である。この問題に解答を与えてくれる文献上のデータはほとんどみあたらない。「このありふれた重要な問題を取りあつかう上で助けとなる、信頼しうる臨床データの必要性をまのあたりにしたので、われわれはこのようなデータを提供するためにこの臨床試験を立案し、実施した。」
この研究では、経皮的冠動脈インターベンションを受けた348例が登録された。そのうち172例がルーチン診断検査群に、176例が臨床症候を重要視して対応する群に無作為に割り付けられた。各患者は9ヵ月間フォローされ、ルーチン診断検査群の患者はインターベンション6週後に運動負荷テスト、6ヵ月後に運動負荷テストと心臓核医学画像検査を受けた。その結果は、驚くべきものであった。実施された診断テストのうち94%がルーチン検査群の患者に対してであり、臨床症候を重要視して対応する群の15倍の検査がなされた。興味深いことに、ルーチン検査群では検査の陽性率は30%以上だったが、心臓に対してなされた処置の比率は2群で同等であった。Eisenberg博士は、「われわれは頻回の診断検査を受けた群での高い陽性率は、多数の再血行再建術につながるものと思っていた。ところが、陽性との結果がすべて同じではなく、心臓専門医はどのテスト陽性が血行再建術の適応となり、どのテスト陽性が適応とならないかを適確に決めていた。」と説明を加えた。
二つの方法はすべての評価結果において同等であった。いくつかの質問項目が、健康に関した生活の質を評価するために用いられたが、これらの結果も両群間で差がなかった。生存率に関してもルーチン検査群の方が悪い傾向を示したが、両群はほぼ同等であった。Eisenberg博士は、「全体として、インターベンション後の再狭窄を実証するためのルーチン検査は症状に基づいた検査と比べて、何ら大きな臨床的恩恵を施さない。この臨床試験は、高リスク患者と低リスク患者で違いがあるかを明らかにするには十分ではなかったが、われわれは現在進行中の試験でこのことがらを検討中である。」との結論を下した。
レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳・監修:京都大学医療技術短期大学部衛生技術学科教授 藤田正俊
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