血行動態が危機に瀕している急性心筋梗塞患者の管理
Management of the Hemodynamically Compromised Patient with Acute MI
Kanu Chatterjee
University of California,
San Francisco, California, USA

急性心筋梗塞患者はしばしば血行動態異常を呈する。Chatterjee博士は、このような患者を治療する医者が、強心薬や輸液などにより血行動態異常を補正することに焦点を絞るのは当然であると認めたうえで、このような患者に対して第1に考えるべきことは、早期の十分な再灌流療法であると強調した。Chatterjee博士は、血行動態異常を有する急性心筋梗塞患者に対する早期再灌流が有効であり、30日生存率を高めるというSHOCK試験のデータを引用することによって、この主張の裏づけをした。


さらにChatterjee博士は、急性心筋梗塞患者の血行動態異常のいくつかの臨床的要因について解説を加えた。最も一般的な原因である左室収縮あるいは拡張障害に簡単にふれたあとで、より稀な原因である二つの例、すなわち自律神経反応異常と右室梗塞についての解説に大部分の時間を費やした。

自律神経反応異常は以下の三つの徴候で特徴づけられる:(1)低血圧(2)全身血管抵抗と心拍数の不十分な上昇(3)正常もしくは低心拍出量。治療としてはアトロピン投与と心房ペーシングがある。循環血液量の低下によるショック状態では、右室および左室の前負荷が共に減少している。治療としては、輸液と右房圧・肺動脈楔入圧変化のモニターが考えられる。

血行動態異常のもう一つの原因として右室梗塞がある。右室梗塞患者では、各血行動態指標は心膜による拡張制限と左室前負荷の低下により影響を受ける。機序は不明だが、左室収縮機能障害も存在する。このような患者に対しては拡張機能を悪化させるので過度の輸液は避けるべきで、強心薬が有効となろう。治療としては、(1)十分な再灌流(2)強心薬(3)房室ブロック患者での心房心室連続ペーシングが考えられる。極端な低右房圧を有する患者に対しては、輸液も適切であろう。

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳・監修:京都大学医療技術短期大学部衛生技術学科教授 藤田正俊


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