APA 2006特集


注意欠陥/多動性障害の心理社会的機能
難治性うつ病に対する新たな薬物治療法
うつ病患者における性的機能
クエチアピンとうつ病
統合失調症に対する長期作用治療薬
迷走神経刺激による難治性うつ病の治療

 DDW特集は、こちらをご覧下さい。

Atomoxetineは注意欠陥/多動性障害の青少年の心理社会的機能を改善する [2006-06-06]

Atomoxetine improves psychosocial function in children and adolescents with attention deficit hyperactivity disorder and anxiety
Atomoxetineは注意欠陥/多動性障害および不安障害の青少年の心理社会的機能を改善する、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。12週間のスタディを完全に終了した患者132人において、atomoxetineは不注意、多動、衝動的な性格などの主な症状を39%減少させ、それに対しプラセボのその割合は4%であった。過剰な心配、発汗、震えなどの不安症状をatomoxetineは32%減少させ、プラセボは19%減少させた。Atomoxetineによる心理社会的な改善は次の3つの異なる指標:多次元不安尺度構成法(実薬9%増に対しプラセボ4%減)、生活参加スケール(実薬31%増対プラセボ10%増)、親が回答する子供の健康に関する質問表(実薬23%増対プラセボ11%増)、で評価した。

オランザピン−フルオキセチンの併用はこれらどちらか一方を使用するよりも難治性うつ病の症状を有意に改善する [2006-06-06]

Combination olanzapine-fluoxetine significantly improves symptoms of treatment-resistant depression compared with either drug alone
オランザピン−フルオキセチンの併用はこれらどちらか一方を使用するよりも難治性うつ病の症状を有意に改善する、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。この解析にはMontgomery-Asberg うつ病評価尺度に使用されたのと同じ2つのスタディから得られた蓄積データを使用した。精神病の症状を有さない再発性大うつ病のクライテリアに合致する患者計1,313人が8週間のオープンラベルのフルオキセチン導入期間に入った:その結果無効であった605人をオランザピン6、12、または18mgにフルオキセチン1日50mgを併用する群、オランザピン単独、フルオキセチン単独を8週間内服する群に無作為に割り付けた。これらの患者のうち441人(72.9%)がスタディを完了した。併用群の患者の44%が治療に反応したのに対し、フルオキセチン単独群のそれは30%、オランザピン群のそれは17%であった。蓄積されたデータの結果、併用療法(尺度-12.6点)はフルオキセチン単独(-9.2点)またはオランザピン(-8.9点)と比較し改善度が有意に大であった。

大うつ病の男性患者の性的機能の改善にはduloxetineを用いた治療がescitalopramよりも有意に成績が良好のようである [2006-06-06]

Sexual function in men with major depressive disorder seems to be significantly better with duloxetine than with escitalopram therapy
大うつ病の男性患者の性的機能維持にはセロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害薬duloxetineが選択的セロトニン再取込み阻害薬escitalopramよりも成績が良好な様である、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。8週間のスタディ(患者680人以上)でうつ病に対するこれらの薬剤有効性の発現を主に比較した。その結果、duloxetine群患者の42%が有効との診断基準に合致したのに対しescitalopram患者におけるその割合は35%であった。8週後に性的機能の低下を訴えた患者はduloxetine内服群で37%であったのに対しescitalopram内服群では59%、プラセボ群では49%であった。しかし、性的機能の副作用による内服中断率は3群間で差がなかった。一方女性においては、抗うつ薬により性的機能が低下したと訴えた者の割合は3群間において同等であった。

BOLDER IIスタディの結果、クエチアピンは急性双極性うつ病の単剤治療薬として使用できる可能性のあることが示された [2006-05-30]

BOLDER II study shows that quetiapine has potential as monotherapy for acute bipolar depression
BOLDER IIスタディの結果、クエチアピンは双極性躁病に加え、急性双極性うつ病の単剤治療薬として使用できる可能性のあることが示されたとAmerican Psychiatric Association学会で発表された。クエチアピンを1日300または600mg、またはプラセボを投与され、試験を終了した300人において、うつ病の症状が改善したのはプラセボよりも両用量の実薬群において有意に多かった。またこの改善はスタディ期間中を通して維持された。BOLDER I および BOLDER IIのデータ解析の結果、自殺思考および不安症状は両用量の実薬群において有意に減少した。両スタディの双極II型障害患者のサブ解析の結果、うつ病の重症度の改善は第1週から第8週にかけてプラセボ群よりも実薬群の方が大であった。

長期作用型paliperidoneは統合失調症の陽性および陰性の症状を軽減し、個人的および社会的機能を改善する [2006-05-30]

Extended-release paliperidone reduces positive and negative symptoms of schizophrenia and improves personal and social functioning
多国籍phase IIIスタディの新たなデータから、長期作用型paliperidoneは統合失調症患者における陽性および陰性の症状を軽減し、個人的および社会的機能を改善することが示された、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。この薬剤は長期作用技術(OROS)を用いた初めてかつ唯一の非定型抗精神病薬であり、血中濃度のピークと谷の深さが最小となる。618人の患者に対して、長期作用型paliperidone 1日3、9、または15mg内服の安全性および機能に対する有効性をプラセボと比較した。3つの用量の実薬投与により、Positive and Negative Syndrome Scaleの平均総スコアおよび5つの因子のスコアそれぞれがプラセボと比較し有意に改善した。全ての用量の実薬投与により、Personal and Social Performanceスコアで測定した患者の機能がプラセボと比較し有意に改善した。

迷走神経刺激療法が有効であった難治性うつ病患者の多くは少なくともその改善効果が24ヵ月間持続する [2006-05-30]

Most patients who respond to vagus nerve stimulation therapy for treatment-resistant depression will maintain improvements for at least 24 months
迷走神経刺激療法が有効であった難治性うつ病患者の多くは少なくともその改善効果が24ヵ月間持続する、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。今回の解析は、まれな慢性および難治性を特徴としたうつ病患者であることを条件とした過去のスタディの蓄積データを使用した。治療が有効であった患者の61〜79%において効果が24ヵ月間維持された。この治療法が有効であった者の中には、様々な大量の抗うつ剤を使用しても有効でないか有効性が持続しない状態が最長で20年間続いた者が含まれていた。


 

DDW 2006特集


C型肝炎に対する併用療法
Adalimumabとクローン病
慢性B型感染に対するentecavir
酸抑制とびらん性食道炎の治癒
混合型過敏性腸症候群の新たな治療
Barrett食道と食道がん

 

ペグインターフェロンアルファ-2aとリバビリンの併用は、C型肝炎患者の(治療困難な患者を含め)治癒的医療として非常に有望であることが示された[2006-06-06]

Combination of peginterferon alfa-2a and ribavirin shows real promise as curative therapy for hepatitis C even in difficult-to-treat patients
ペグインターフェロンアルファ-2aとリバビリンの併用は、C型肝炎患者の(ジェノタイプ1に感染し従来のインターフェロン療法が不成功であった治療困難な患者を含め)治癒的医療として非常に有望であることが示された、とDigestive Disease Weekで発表された。日本における2つのphase IIIスタディの1つにおいて、過去に治療をされていなかったジェノタイプ1の慢性C型肝炎患者で併用療法を受けた患者の61%において持続的なウイルス学的有効性が認められた。さらに、初期の12週間に有効性の認められなかった患者の17%において12、24週後には有効性が認められ、最終的には持続的なウイルス学的有効性が認められた。もう片方のスタディでは、従来のインターフェロン単独療法で無効であったか再発した患者の54%がこの併用療法で治癒した。興味深いことに、従来のインターフェロン療法が無効であったジェノタイプ1のC型肝炎患者の50%においてこの併用療法で持続的なウイルス学的有効性が認められた。

Adalimumabは中等度から重度のクローン病患者の臨床的な寛解を1年間維持するのに成功した[2006-06-06]

Adalimumab successful at maintaining one year of clinical remission in patients with moderately to severely active Crohn’s disease
Adalimumabは中等度から重度のクローン病患者の臨床的な寛解を1年間維持する効果がプラセボより優れている、とDigestive Disease Weekで発表された。CHARMトライアルはadalimumab導入から開始された(開始時80mg、2週後から40mg)。計778人の患者(臨床上有効であったのは499人)が4週後に、40mgのadalimumabを隔週、毎週、またはプラセボを52週間投与する群に無作為に割り付けられた。4週間後にはプラセボ群に比べ薬剤に反応した患者の間で、有意に高い寛解率が認められた。隔週投与をされた患者172人のうち40%が26週後に寛解とみなされ、36%は56週後に寛解した。毎週投与された患者157人中46%が26週後に寛解となり、56週後には41%が寛解した。一方、プラセボ群の患者の寛解率は26週後で17%であり、56週後にはわずか12%であった。

Entecavirは慢性B型感染症患者のviral loadを検出不可能なレベルまで抑制する能力がラミブジンよりも有意に高い [2006-06-06]

Entecavir is significantly better at suppression of viral load to undetectable levels than lamivudine in patients with chronic hepatitis B infection
Entecavirは2つのタイプの慢性B型感染症患者においてviral loadを検出不可能なレベルまで抑制する能力がラミブジンより高い、とDigestive Disease Weekで発表された。ヌクレオシド治療を施行されたことのないHbe抗原陰性の慢性B型肝炎に最高96週間の治療を行なった後、entecavirで治療した患者のうちviral loadが検出できなかったのは94%であったのに対し、ラミブジンを投与された患者におけるその割合は77%であった。どの患者においてもentecavir耐性は認められなかった。他の96週間のスタディではラミブジン無効のHbe抗原陽性の慢性B型肝炎の患者にラミブジンを継続する群とentecavirを使用する群とを比較した。96週間の治療の後、entecavir群の30%の患者がviral load検出不能となったのに対しラミブジンを継続した患者のその割合は1%に満たなかった。Entecavir耐性によるウイルスのリバウンドは96週間の間に9%に認められ、それらの患者においてはすでにラミブジン耐性遺伝子置換が存在した。

前向き研究の結果、胃酸の抑制と酸逆流によるびらん性食道炎の治癒には直接的な相関があることが示された [2006-05-30]

Prospective study demonstrates a direct relationship between gastric acid suppression and healing of erosive esophagitis due to acid reflux disease
前向き研究の結果、胃酸の抑制と酸逆流によるびらん性食道炎の治癒には直接的な相関があることが初めて示された、とDDWで発表された。Grade CまたはDの患者を1日10mgまたは40mgのesomeprazoleを4週間投与する群に無作為に割り付けた。患者らは、酸抑制状態の評価のため24時間のpH検査を5日目に施行された(目標のpHは4より高い値)。4週後に内視鏡検査を施行した。さらに、ベースライン時と内視鏡検査前に症状をスコア化した。103人中72人が4週後に治癒した。食道炎が治癒した患者のうち5日後に酸コントロールが良好であったのは61.3%であったのに対し、食道炎が治癒しなかった者のその割合は42.1%であった。24時間pH検査のデータ解析の結果、治癒は食道内の酸コントロールの長さと関連があった(24時間中の95.2%対88.9%)。酸コントロールが良好であると、4週後の症状スコアも有意に低かった。

セロトニン類似物質tegaserodは混合型過敏性腸症候群患者の初めての有望な治療薬であることが示された [2006-05-30]

The serotonin mimic tegaserod shows promise as the first treatment option for patients with mixed-pattern irritable bowel syndrome
新薬tegaserod(セロトニン4型受容体のアゴニスト)は、混合型過敏性腸症候群患者に対する初めての安全で有効な治療薬として有望であることが示された、とDDWで発表された。この4週間のスタディでは2つの別のコホート、つまり、便秘型の女性337人と混合型女性324人を、tegaserodを1日6mgを2回またはプラセボを内服する群に無作為に割り付けた。混合型の患者の52.3%においてtegaserodは症状を少なくとも75%以上軽減したのに対しプラセボ群のその割合は36.3%であった。便秘型の患者の43.3%においてtegaserodは症状を軽減したのに対しプラセボにおいて症状が軽減したのは28.9%であった。Tegaserodはプラセボと比較し、1週間の便通頻度、便の粘度、いきみを有意に軽減した。有害事象による中断率は両コホートにおいてtegaserodもプラセボも非常に低かった。

胃食道逆流症、Barrett食道、および食道腺がんの関連が明らかとなった [2006-05-30]

Relationships clarified among gastroesophageal reflux disease, Barrett’s esophagus, and esophageal adenocarcinoma
研究により胃食道逆流症とBarrett食道、および食道腺がんに関連があることが明らかとなった、とDDWで発表された。研究者らは食道および胃の腺がん186症例を研究した結果、食道がんと逆流には強力な相関があることを発見した。他の研究で同じ研究者らは、Barrett食道を発症した者が多数存在する31家族278人の遺伝的相関の解析を行った。その結果、Barrett食道と食道腺がん両者に罹患しやすくする遺伝子が、あるひとつの染色体上に存在するとの強力なエビデンスを発見した。研究者らはさらに94の家族の解析を行い、最終的には胃食道逆流症患者全般にスクリーニング血液検査を行ってBarrett食道への進行をできるだけ早期に発見したいと考えている。


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