アルツハイマー病などの老年期疾患診断のために無症候性の脳画像はどの時点で使用可能か?
When Will We Be Able to Use Presymptomatic Brain Imaging Diagnoses of Geriatric Diseases such as Alzheimer’s Disease?

Mark George, MD
Medical University of South Carolina
Charleston
, SC, USA


脳画像の進歩は驚異的である。1990年にはPETでは、脳の2分の1の8mmスライスだけで、数週間のコンピュータの使用を必要とし、解析ソフトも統計ソフトもなかった。2003年にはfMRIでは、全体脳を2mmスライスで2秒で造影でき、リアルタイムで解析が可能である。しかし構造と機能は必ずしも一致しない。

PET、SPECTにては脳血流、糖代謝が測定できる。6〜8mmのスライスが可能である。アルツハイマー病として継続的な認知機能低下がある場合、すなわち診断がついたものには一般的特徴を有する。一般に頭頂葉、側頭葉活動機能の低下がみられる。しかし無症候性の場合、特異的所見はない。PET、SPECTにおいて、痴呆性疾患の早期診断のためのLigandsとしてはパーキンソン病に対するDOPA-Ligandsに限られる。

fMRIにおいてhemoglobin/deoxyhemoglobin 比は脳活動の変化をとらえる。しかし個人差があり、一般化はできない。個人に対して多数回測定し統計的データを作成することで、個人レベルでのデータベースを作成することは可能である。軽作業により脳活動が変化し負荷の種類、程度によりマッピングが可能である。このことから個人レベルでの脳活動の継時的変化をとらえることはできる。

個人レベルのデータベースを多数集めることで一般化ができる可能性はある。図のこれらは未発症のヤングアダルトの脳画像である。上段はアルツハイマー病の発症リスクが高いとされる遺伝子型APOE ε4を有するグループである。中段はアルツハイマー病の発症リスクが少ないとされる遺伝子型APOE ε3を有するグループである。両グループにFASテスト(COWAT:言語の流暢性のテスト)を施行した。下段は両グループにおける脳活動の差を示したものである。注目すべき点は、APOE ε4を有するグループのほうが、より高い脳活動を呈している点である。このことは未発症においても、リスクグループのほうが同じ作業を遂行するためにより多くの脳活動を強いられているということを示している。

 


レポーター:東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科 橋爪敏彦