痴呆性疾患治療の長期的効果に対する実証
The Evidence for Long-Term Benefits in the Treatment of Dementia

Serge Gauthier, MD
MCSA Alzheimer's Disease Research Unit,
McGill Centre for Studies in Aging

Verdun, QC, Canada


アルツハイマー病(AD)、血管性痴呆(VaD)あるいは混合性痴呆は、痴呆のうちで最も一般的な痴呆性疾患である。すべては進行的に悪化する。これらの深刻な神経変性状態を治療するにおいて、目的は認知および行動症状を安定化させることであり、できるだけ長く、安全に独立して生活できるようにすることである。

初期から中等度のAD治療についての最近のガイドラインはコリンエステラーゼ阻害剤(AChEIs)の使用を勧めている。ビタミンEもこの疾患の進行を遅らせるための試みとして考慮されるべきである。段階に応じた補助、音楽、ウォーキングなども日常生活機能や、問題行動の改善のために試みるべきである。

ドネペジルの12ヵ月間(n=286)プラセボとの二重盲検試験では、プラセボと比べ、MMSE、日常生活活動(ADL)において有意に効果があった。RivastigmineもADとプラセボとの6ヵ月の二重盲検試験、6ヵ月の公開試験にて、プラセボに比べ、ADAS-Cogによる評価において有意に効果があった。

長期間の初期から中等度のADに対するgalantamine公開試験においては、24mg/日投与にて、少なくとも4年間認知機能は、ADAS-Cogにより評価され、ベースラインを維持した。また多くの患者においては認知機能の早期改善がみられた。

ドネペジルを使用したpossibleとprobableVaDに対する12ヵ月間の試験では、認知機能に対して有意な効果がみられた。この試験は行動に関しては評価されなかった。

VaDと混合性痴呆に対するgalantamineの二重盲検試験では、プラセボに比べ、認知機能、ADL、行動において有意に効果があった。本研究の長期間の公開試験では、galantamine 24mg/日投与にて18ヵ月間以上の行動(NPIにて評価)における悪化を制御できた。また、多くの患者で少なくとも2年以上認知機能において、ベースライン以上を維持した。

一般的な痴呆性疾患に対するAChEIsの長期的研究においては、広く、継続的治療効果を示した。治療導入せずに急速に悪化する多くの患者に対しても、今や治療の導入および長期使用のための十分な説明が得られれば、そのベースライン以上の維持が可能である。

 


レポーター:東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科 橋爪敏彦