非定型抗精神病薬がアルツハイマー型痴呆やその他の痴呆でみられる攻撃性に有効であることはよく知られている。
痴呆においては、攻撃的ではない精神病症状(徘徊や歩き回り、収集癖、物隠し、叫声、文や質問の繰り返しなど)も生じるが、この種の症状にリスペリドンがどの程度有効であるかはまだよくわかっていない。本研究では、プラセボを対照とした、12週間のリスペリドン多施設無作為試験(Katzら,
1999*)(リスペリドン 0.5mg、1mgないし2mg/日)の結果を再解析して、アルツハイマー型痴呆における非攻撃的な精神症状に対するリスペリドンの効果を評価した。
対象は617例の入院中のアルツハイマー型痴呆患者。非攻撃的な精神症状を身体的動きの側面と言語的側面に分け、それぞれをCohen
Mansfield Agitation Inventoryの該当項目で評価し、その重症度の変化を共分散分析で解析した。

身体的動きについての非攻撃的精神症状はリスペリドン1ないし2mg/日(それぞれp<0.05, p<0.01)、言語についての非攻撃的症状についてはリスペリドン2mg/日(p<0.01)でプラセボと比較して有意に改善することが示された。痴呆の精神病症状については、攻撃的な症状のみならず、非攻撃的な症状についても、少量のリスペリドンが有効であると考えられた。
*Reference: Katz IR, Jeste DV, Mintzer JE,
et al. Comparison of risperidone and placebo for psychosis
and behavioral disturbances associated with dementia: a randomized,
double-blind trial. Risperidone Study Group. J Clin Psychiatry
1999; 60: 107-115.
レポーター:昭和大学医学部精神医学教室助教授 三村 將 |
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