抗癌剤の併用療法はNSCLCで広範囲に研究されている。奏効率と生存期間を改善するために、研究者らは、作用機序が異なりそして殺細胞的な化学療法を補う薬剤の研究を開始している。
ひとつの有望なアプローチはEGFRを標的としている薬剤を用いることである。EGFRを標的とする薬剤は、この受容体の作用を遮断し、細胞の発育と増殖を阻害する。これら薬剤はアポトーシスを増加させる。
EGFRは多くの種類の細胞の発育を調節する。多くのNSCLCはEGFRとその生来のリガンドである悪性化増殖因子(TGFα)を発現している。EGFRの過剰発現は扁平上皮癌そして末期NSCLCに一般的である。EGFRの過剰発現はまた、腺癌、大細胞癌そして一部の早期肺癌でも認められている。
研究者らはNSCLCの第I相試験で、いくつかのEGFR阻害剤を検討している。それら薬剤はcetuximab(C225、Erbitux)、erlotinib(OSI-774、Tarceva)そしてgefitinib(ZD1839、Iressa)を含んでいる。Erlotinibとgefitinibの第II相試験が完結している。

パクリタキセル+カルボプラチンとgefitinibの併用そしてゲムシタビン+カルボプラチンにgefitinibを併用する第I相試験が行われた。このASCOではgefitinibと化学療法を併用する第III相試験の結果が発表された。
EGFR阻害剤の研究:現在の状態
- | 第I相 | 第II相 |
第III相
(EGFR阻害剤+化学療法) | Gefitinib
(ZD1839, Iressa®) | 完結 | 完結 | 完結 | Erlotinib
(OSI-774, Tarceva) | 完結 | 完結 | 進行中 | Cetuximab
(C225, ErbituxTM) | 完結 |
- | - |
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EGFRを発現している肺癌をもつ全ての患者が、これら標的治療により臨床的利益がもたらされるわけではない。どうしてある特定の癌が反応するかについては、まだ解明されていない。研究者らは技術の進歩により、EGFRが癌細胞の発育調節に最も重要な役割を果たしている患者を特定しうるようになることを望んでいる。
将来の研究方向としては、手術後またはその他のアジュバント治療の中にEGFR阻害剤を用いることであろう。これに加えて、これら薬剤は合併症または全身状態が良くないために化学療法を受けられない患者への最初の治療として用いることであろう。
複数の前臨床研究者らはEGFR阻害剤の化学予防剤としての役割につき、興味深い示唆を与えている。米国での、肺癌特定研究プログラム(the
lung cancer Specialized Programs of Research)はNSCLC発症の危険性の高い個人に対しての化学予防として、gefitinibを評価することを提案している。
レポーター:
Andrew Bowser
| 日本語翻訳・監修: | 愛知県健康づくり振興事業団副理事長
愛知県がんセンター名誉総長
小川一誠 |
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