大規模な無作為比較試験はT3、リンパ節陽性の直腸癌において術後の化学、放射線療法が局所再発を減少させ、生存を改善させることを示している。複数の研究において、局所再発は約10%であった。5年生存率はおよそ55〜65%であり、手術単独より10〜15%良好である。
しかし、大規模なグループ間試験(INT0114)における7年生存率は5年生存率64%に比較して56%である。さらに局所再発率は5年での14%に対して7年では17%である。現在の治療の効果を理解するためには、さらに長期間の経過観察を待つ必要性を示唆している。
Intergroup Study (INT 0114)
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また、この結果は術後補助化学放射線療法における新しい戦略の必要性を示唆している。グループ間試験(INT0114)は約18ヵ月前に患者登録が締め切られており、5-フルオロウラシルの持続点滴と急速静注の有効性が比較評価される。この試験の結果は2〜3年後に出るであろう。
一部の直腸癌は術後補助治療を必要としないかもしれない。最近の結果では術後化学放射線療法はT3、リンパ節陽性の、あるサブグループには必要ないかもしれない。このような患者は補助療法ではかならず生ずる毒性を避けることができるであろう。確証を得るために無作為比較試験を実施する必要がある。現時点ではまだ、腫瘍医は術後補助化学放射線療法を標準治療と考えている。
術前補助療法には多くの利点がある。そのひとつは肛門括約筋の温存率を向上させることであり、また、急性副作用の発現頻度も低くする。
12の比較試験、その多くはヨーロッパの試験であるが、短期間の術前補助放射線療法を化学療法なしで行う方法を検証している。そのうちのひとつ、Swedish
Rectal Cancer Trialだけは、術前放射線療法単独で局所コントロールと生存の改善を示している。現在のSwedish
Rectal Cancer Trialは、短期集中型の放射線治療と長期間の標準放射線治療を比較している。
Swedish Rectal Cancer Trial:
臨床的切除可能(T1〜T3)直腸癌
- | 25Gy放射線療法
+手術療法 | 手術療法 | 単独
P値 | 局所再発 | 12% | 27% | <0.001 | 5年生存 | 58% | 48% | 0.04 |
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一方、研究者は他の殺細胞性薬剤や生物活性薬剤を直腸癌の術前複合療法に取り入れることを検討している。そのような研究のひとつに5-フルオロウラシル持続点滴+イリノテカンの方法があり、高い完全寛解率を示す。このレジメンはRadiation
Therapy Oncology Groupの新しい第II相無作為比較試験の骨格のひとつである。早期の報告では、この治療は5-フルオロウラシル単独治療より高い奏効率が得られることを示唆している。
レポーター:
Andrew Bowser
日本語翻訳・監修: 癌研究会附属病院化学療法科副部長 伊藤良則
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