I/II期の非小細胞肺癌に対して集学的治療法は有用か? 
Stage I/II Non-Small-Cell Lung Cancer: Is There a Role for Combined-Modality Therapy?

Katherine M.W. Pisters, MD
University of Texas, M. D. Anderson Cancer Center
Houston, TX, USA


早期(I/II期)のNSCLC患者に対する集学的治療法の意義を確立するために、過去20年にわたって多くの臨床試験が行われたが、術前あるいは術後の放射線療法、化学療法の適応ははっきりしていない。

術後の放射線療法に関する報告はいずれも症例数が少なく、臨床的な有用性は証明されていない。また、9つの試験から2,000例を集積したメタアナリシスの結果では、特に早期の肺癌患者において、放射線療法は生存に対してむしろ有害に作用することが示され、旧式の照射方法を行った結果であると批評されている。最近の臨床試験では死亡率の増加は認められていない。

術後補助化学療法に関しても、早期の肺癌患者の生存率に対する有用性は証明されていない。1,400例を解析したメタアナリシスでは、シスプラチンを含む術後補助療法により5年の時点において絶対死亡率が5%改善し、5年間の相対危険率が13%低下することが示された。

術前放射線療法の臨床試験では切除率と生存率において全く改善が認められず、上肺溝腫瘍(パンコースト腫瘍)患者に対してのみ明らかな意義が示されている。

一方、III期NSCLC患者では術前化学療法により生存率などが改善する可能性が示されている。すなわち1990年代の後半に実施された2つの比較試験において、生存期間中央値、長期生存率のいずれも有意に改善することが報告された。

I/II期のNSCLCに対する術前化学療法の臨床試験はこれまでにたくさん報告されているが、いずれも症例数が少ない。最近いくつか大規模な比較試験が始まったので、早期のNSCLC患者に対する術前化学療法の有用性が明らかになると思われる。



レポーター: Charles Bankhead
日本語翻訳・監修: 岡山大学医学部附属病院第二内科 上岡 博