I/II期の肺癌治療における外科治療の役割
Role of Surgery in the Treatment of Stage I and II Lung Cancer

Robert J. Ginsberg, MD
University of Toronto, Toronto General Hospital
Toronto, Ontario, Canada


早期の肺癌(Ia期、Ib期)患者に対する現在の標準的治療法は肺葉切除であり、縮小手術の役割はまだ確立されていない。

外科医によっては、早期の肺癌では楔状切除や区域切除のような縮小手術を行うことにより、合併症や死亡率が減る(現時点では楔状切除の死亡率は1%よりはるかに低い)と擁護するものもある。

しかしながら、肺葉切除の方が縮小手術に比べて局所再発率が低く、長期生存率も良好であるとの結果がいくつか報告されており、現時点では早期の非小細胞肺癌(T1 N0)であっても、肺葉切除が楔状切除や区域切除よりも優ると考えられている。


局所再発―T1 N0腫瘍

腫瘍径
区域切除
肺葉切除
<2cm
9/40(22.5%)
1/35(2.8%)
2〜3cm
4/15(26.6%)
1/10(10%)
13/55(23.6%)
2/45(4.4%)

    WarrenおよびFaber、1993年による


楔状切除や区域切除などの縮小手術に対する局所放射線治療の併用効果に関しては、いくつかのレトロスペクティブな研究において、縮小手術後に局所療法を行うことにより、再発の抑制効果が示されている。しかしながら、集学的治療法の有用性はプロスペクティブな臨床試験により評価されなければならない。

早期の肺癌におけるリンパ節郭清の意義もまた未解決の問題である。肺門リンパ節転移を有する患者は完全なリンパ節郭清を受けなければならない。しかしながら、肺門リンパ節転移がない場合のリンパ節のサンプリングの意義は確立されていない。

American College of Surgeons Oncology Groupは手術時におけるリンパ節のサンプリングの有用性を確認するために、大規模な多施設共同の臨床試験を開始した。すなわち、肺門リンパ節転移のない患者が完全なリンパ節郭清を受ける群とリンパ節のサンプリングのみを受ける群に振り分けられた。この研究により、リンパ節郭清にて微小遠隔転移を制御することにより、生存率が改善するか否かの結論が得られると思われる。

らせんCTによる肺癌検診の導入により、縮小手術の可能性が再検討されており、CT検診で発見された1cm未満の病変に対して肺葉切除を適応することに関して疑問を投げかける外科医もいる。すなわち、CTの登場により早期の肺癌の診断が向上しているので、非常に早期の病変に対する楔状切除や区域切除の有用性を再検討する必要がある。

気管支肺胞の過形成に対しては縮小手術が有用であるかもしれない。日本の研究者はすでに固形癌のコンポーネントのない過形成に対して楔状切除の意義を検討するために、数種類のプロスペクティブな臨床試験を始めている。

しかしながら、適切な臨床研究の結果が確認されるまでは、早期の肺癌治療におけるゴールドスタンダードはやはり手術である。



レポーター: Charles Bankhead
日本語翻訳・監修: 岡山大学医学部附属病院第二内科講師 上岡 博