化学療法を受けていない悪性胸膜中皮腫患者に対するpemetrexed+シスプラチン併用療法とシスプラチン単独療法との単盲検比較試験
Phase III Single-Blinded Study of Pemetrexed + Cisplatin vs. Cisplatin Alone in Chemonaive Patients with Malignant Pleural Mesothelioma

Nicholas J. Vogelzang, MD
University of Chicago
Chicago, IL, USA


悪性胸膜中皮腫は悪性度が高く、典型的な場合、石綿に曝露して20〜40年後に発症すると言われている。毎年米国では2,500例、ヨーロッパでは5,000例の新規患者が発生しているが、今後20年間はさらに増加すると考えられている。

生存期間は短く、激しい胸痛、慢性の息切れ、および絶望感などを生じるが、承認された有効な薬剤はなく、pemetrexed(Alimta)が臨床第I相試験において有望な薬剤として登場してきた。

この新規葉酸拮抗剤は単剤投与にて14%の奏効率が得られたことより、pemetrexed(500mg/m2)とシスプラチン(75mg/m2プラチン単独療法を比較する第III相試験が実施された。

Primary endpointは生存率であり、secondary endpointとして奏効率、QOL、および肺機能が評価された。452例が登録され、448例において最終解析が実施された。

Vogelzang博士の報告によると、生存期間中央値はpemetrexedとシスプラチンの併用療法群で12.1ヵ月、シスプラチン単独療法群で9.3ヵ月と約25%の改善が得られた(p=0.02)。

悪性胸膜中皮腫で生存率の改善が確認されたのは初めてであり、奏効率(41%対17%)、増悪までの期間の中央値(5.7ヵ月対3.9ヵ月)のいずれも併用療法群が良好であった。

さらに重要な点は症状の改善効果であり、2種類の肺機能検査値の改善が認められ、例えば肺活量は併用療法群では徐々に改善したが、対照群では逆に低下した。疼痛のスコアーは併用療法群で著明に改善したのに比べ、対照群では悪化した。

Pemetrexedとシスプラチンの併用療法群では当初高率に毒性が認められたが、これはhomocysteineの上昇と関連していた。そこでpemetrexed投与群に対して葉酸とビタミンB12の併用投与を行ったところ、毒性と治療関連死が減少し対照群と同等となった。

 


レポーター: Andrew Bowser
日本語翻訳・監修: 岡山大学医学部附属病院第二内科講師 上岡 博