悪性胸膜中皮腫は悪性度が高く、典型的な場合、石綿に曝露して20〜40年後に発症すると言われている。毎年米国では2,500例、ヨーロッパでは5,000例の新規患者が発生しているが、今後20年間はさらに増加すると考えられている。
生存期間は短く、激しい胸痛、慢性の息切れ、および絶望感などを生じるが、承認された有効な薬剤はなく、pemetrexed(Alimta)が臨床第I相試験において有望な薬剤として登場してきた。
この新規葉酸拮抗剤は単剤投与にて14%の奏効率が得られたことより、pemetrexed(500mg/m2)とシスプラチン(75mg/m2プラチン単独療法を比較する第III相試験が実施された。
Primary endpointは生存率であり、secondary endpointとして奏効率、QOL、および肺機能が評価された。452例が登録され、448例において最終解析が実施された。
Vogelzang博士の報告によると、生存期間中央値はpemetrexedとシスプラチンの併用療法群で12.1ヵ月、シスプラチン単独療法群で9.3ヵ月と約25%の改善が得られた(p=0.02)。
悪性胸膜中皮腫で生存率の改善が確認されたのは初めてであり、奏効率(41%対17%)、増悪までの期間の中央値(5.7ヵ月対3.9ヵ月)のいずれも併用療法群が良好であった。

さらに重要な点は症状の改善効果であり、2種類の肺機能検査値の改善が認められ、例えば肺活量は併用療法群では徐々に改善したが、対照群では逆に低下した。疼痛のスコアーは併用療法群で著明に改善したのに比べ、対照群では悪化した。


Pemetrexedとシスプラチンの併用療法群では当初高率に毒性が認められたが、これはhomocysteineの上昇と関連していた。そこでpemetrexed投与群に対して葉酸とビタミンB12の併用投与を行ったところ、毒性と治療関連死が減少し対照群と同等となった。
レポーター:
Andrew Bowser
日本語翻訳・監修: 岡山大学医学部附属病院第二内科講師 上岡 博
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