BRCA1 BRCA2 変異に対する卵管卵巣摘除術による危険減少効果
Efficacy of Risk-Reducing Salpingo-Oophorectomy in Women with BRCA1 and BRCA2 Mutations

Kenneth Offit, MD, MPH
Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
New York, NY, USA


強い関心の結果、1990年代中期にBRCA-1 BRCA-2 遺伝子が発見された。これらの遺伝子変異をもって生まれた女性は乳癌、卵巣癌を発生する危険が高い。一般人におけるこの変異の頻度は1/400〜1/800である。しかし、ある特定の集団、とくにアシュケナージ家系ではより高率に認める。

遺伝子検査によってもたらされた情報の最善の使用方法について研究者は模索した。この遺伝子変異の保有者が選択できる方法には、乳房X線検査、医師または患者による検査、経膣的超音波検査、CA125血液検査、薬剤による予防、乳房・卵巣の予防的手術などがある。

これまでに研究者はスクリーニング、予防的乳房切除について評価してきた。Offit博士は卵管卵巣摘除による危険減少の効果を検証した最近の研究について発表した。

この前向き研究はBRCA-1 またはBRCA-2 の変異を有する173人を対象とした。患者、家族は遺伝子カウンセラーと医師に会い、予防方法について議論した。それらの人たちのなかから、101人は卵管卵巣摘除を受けることを選択し、72人は経過観察を選んだ。

手術を選んだ101人のなかで、研究者は手術時に疑いのない早期卵巣癌を3例発見した。平均22.6ヵ月の観察中にさらに4例の癌が発見された。それは3例の乳癌と1例の腹膜癌であった。

それに比較して、経過観察のみの72例では13例に癌が見つかった。3例の早期卵巣癌を統計解析から除外すると手術をした群において乳癌、卵巣癌の有意な危険減少を認めた。

 

BRCA変異を有する女性における卵管卵巣摘除:
癌の発生率(平均22.6ヵ月)


 
悪性新生物(総計)
乳房
卵巣
腹膜
経過観察
13
8
4
1
手術
4
3
-
1

この結果から、BRCA 遺伝子変異を有する女性は卵管卵巣摘除を受けることを考慮すべきである。しかし、乳癌と腹膜癌が依然として起こりうることを医師は女性にカウンセルする必要がある。

手術を受けるBRCA 保有者は長期間の観察、ケアを続けるべきである。

レポーター: Andrew Bowser
日本語翻訳・監修: 癌研究会附属病院化学療法科副部長 伊藤良則