米国では肺癌による死亡者数は、乳癌、前立腺癌と大腸癌を合わせた数よりも多い。発症時既に進行している場合が多く、5年生存率は15%にとどまっている。
化学療法はPSの良好な進行肺癌患者の生存期間を延長させるが、臨床医や患者の多くは、化学療法は毒性が強くQOLを損なうと信じている。
Cancer and Leukemia Group B(CALGB)は、強力な化学療法が進行肺癌の生存率を改善するか否かを検証する目的で、carboplatinとパクリタキセルの併用療法とパクリタキセル単剤療法の比較試験を実施した。
Primary endpointは生存率であったが、Lilenbaum博士は有効性が同等と想定される場合、QOLを考慮することが大切であると考えてQOLを検討し、さらにそれぞれの治療法の費用についても検討した。
多剤併用療法を行った方が、奏効率が高く、生存率が延長していた。
すなわち、観察期間中央値が19.7ヵ月の時点で、生存期間中央値はcarboplatinとパクリタキセルの併用療法群で8.8ヵ月、パクリタキセル単剤療法群で6.7ヵ月(p=0.013)であり、高齢者においても併用療法群が良好であった。1年生存率はそれぞれ37%と33%であったが、有意差はなかった。
多剤併用療法
対 単剤療法:有効性と安全性
奏効率 | 30% | 16% | <0.0001 | 生存期間中央値 | 8.8ヵ月 | 6.7ヵ月 | 0.013 | 1年生存率 | 37% | 33% | NS | 毒性(grade3-4) | 90% | 73% | <0.0001 |
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Grade3-4の毒性は併用療法群で90%と単剤療法群の73%に比し有意に高率であったが、対応可能であった。
QOLについても、両群間に差は認められなかった。
抗生物質の投与量、輸液量、入院期間、および救急外来の受診回数などにも差が認められなかった。
以上より、PSの良好な進行非小細胞肺癌患者に対しては多剤併用療法を行うべきであり、高齢者であってもPSが良好であれば同様と考えられる。
レポーター:
Andrew Bowser
日本語翻訳・監修: 岡山大学医学部附属病院第二内科講師 上岡 博
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