切除不能転移性大腸癌に対するcelecoxib、イリノテカン、
5-フルオロウラシル、ロイコボリンの第II相試験
A Phase II Trial of Celecoxib (CX), Irinotecan (I),
5-Fluorouracil (5FU), and Leucovorin (LCV) in Patients (pts) with Unresectable or Metastatic Colorectal Cancer (CRC)

Charles D. Blanke, MD
Oregon Health and Science University
Portland, OR, USA


今日の転移性大腸癌に対する標準的治療法は、イリノテカン+5-フルオロウラシル+ロイコボリン(IFL)療法であるが、IFL療法は重症の下痢や骨髄抑制などの毒性が強い。

最近の研究では、シクロオキシナーゼ-2(COX-2)の阻害は、抗腫瘍効果を高めてIFL療法の下痢をやわらげる効果が示唆される。

Celecoxibは、COX-2を選択的に阻害する非ステロイド性抗炎症剤で、米国では、関節炎や家族性腺腫様ポリープ(FAP)の治療薬として承認されている。Celecoxibと化学療法剤の併用療法の安全性は、臨床第I相試験で確かめられ、また、動物実験から、celecoxibがIFL療法で頻度の高い下痢を減ずる可能性が示唆されている。

この情報をもとに、25人の進行大腸癌患者を対象に、celecoxibとIFL併用の第II相試験が開始された。Celecoxibは単独で試験的に2週間投与され、14日間の投与が完了した患者に対しIFL療法を、病気の進行もしくは重篤な副作用が出現するまで施行した。

Celecoxibは、FAPの治療に用いられる用量の400mgを1日2回投与された。IFL療法はSaltzらのレジメンに従って週1回×4週を7週毎に繰り返して施行された。プライマリーエンドポイントは、全生存率である。

22例で副作用の評価を行い、18%に電解質異常を認めた。好中球減少は27%に認められたが、感染症の発症はまれであった。重度の下痢と嘔気は23%に認められ、血小板減少は、3例で認められた。


Grade 3 & 4 Toxicities: 22 patients


-
回数
百分率(%)
電解質異常
4
18
高血糖
3
14
好中球減少
6
27
下痢
5
23
嘔気
5
23
他の消化器症状
4
18
血栓症状
3*
14
全身倦怠感
3
14
   *脳血管障害により1人死亡

Intent-to-treat解析では、24%の患者でpartial responseが得られ、stable diseaseは43%で少なくとも7週間持続した。Progressionは14%で認められ、19%が副作用や患者の意思で本研究から脱落した。


効果:最上の反応、21 patients


部分寛解(partial response)
24%
不変(stable disease)
43%
増悪(progression)
14%
非評価(not assessed)
19%
-
-
奏効率(objective response rate)
24%


患者は中央値2サイクル(1〜9サイクル)の治療を受け、奏効期間の中央値は6ヵ月、無増悪生存期間の中央値6.8ヵ月、生存期間の中央値は10.7ヵ月であった。


Additional Results

治療回数、中央値(範囲)
2(1〜9)
奏効期間、中央値(月)
6.0
無憎悪生存期間、中央値(月)
6.8
生存期間、中央値(月)
10.7

 

Blake博士によれば、この試験と他の第II相試験(Hoosier Oncology GroupがASCOで報告)の双方でgrade3以上の好中球減少が認められたが、これは、化学療法単独で予想される頻度の半分であった。

この結果は、併用化学療法とCOX-2阻害剤との併用の無作為化比較試験を、術後あるいは進行大腸癌患者を対象に行うきっかけを与えたものと述べている。

しかし、多くの疑問が残される。例えば、好中球減少症をやわらげる投与量が示されなかった。この先の第II相試験結果や、さらには無作為化第III相試験の結果を報告する時には、celecoxibと化学療法との併用が、患者にとって本当に利点があるのかについて、より詳細な情報提示がなされるであろう。

レポーター: Andrew Bowser
日本語翻訳・監修: 東京慈恵会医科大学内科学(血液・腫瘍)助教授
東京慈恵会医科大学附属病院血液腫瘍内科診療部長
薄井紀子