米国において転移性大腸癌の標準的な初回治療は、毎週のイリノテカン+5-フルオロウラシル+ロイコボリンのIFL療法である。
North Central Cancer Treatment Group(NCCTG)は、グループ間の研究として行ったN9741試験では、4.5%のIFL療法を受けた患者が60日以内に死亡した。このIFL療法関連死が異常に高いことは、危惧されることである。
しかし、これまでの臨床試験では、薬剤関連死を薬剤投与後30日以内の死亡と規定しているため、60日以内の死亡については検討されておらず、この高率の治療関連死を評価することは困難である。
さらに、臨床研究における60日以内の死亡率が、実際の臨床現場での死亡率と比較できるのかは不明である。
これらの情報を得るために、米国における一般病院でのIFL治療患者の治療開始60日以内の全ての死因について分析した。一般の腫瘍専門医が、副作用を避けるために現在推奨される初回の投与量を減じて治療を行うかどうか探索した。この研究では、FDAの安全性評価基準に従って評価を行った。
2001年の最初の4ヵ月では、各病院で10人の患者を連続して評価した。60日以内の死亡は、240人の一般病院患者と臨床第III相試験に登録された患者225人(Saltz
et al., N Eng J Med. 2002; 343: 905-14)の比較で評価された。
その結果、治療開始60日以内の死亡率は、一般病院では、1.3%であり、N9741における4.5%やSaltz studyの6.7%に比べて低率である。
レジメン
| 臨床研究 | 患者 | 60日以内の
死亡率 | 一般臨床
| - | - | - | Bolus
イリノテカン/
5-FU/ロイコボリン | 1 |
240 |
1.3 | 臨床研究
| - | - | - | Infusional
oxaliplatin/
5-FU/ロイコボリン
(FOLFOX) | 3 | 598 | 1.9 | Infusional
イリノテカン/
5-FU/ロイコボリン
(Douillard/FOLFIRI) | 6 | 445 | 2.5 | Bolus
イリノテカン/
5-FU/ロイコボリン
(Saltz) | 6 | 927 | 4.4 | Oral
capecitabine
(Mackean) | 2 | 596 | 5.7 | Infusional
5-FU/
ロイコボリン
(de Gramont) | 4 | 602 | 4.0 | Bolus
5-FU/
ロイコボリン
(Roswell Park) | 6 | 1085 | 7.6 | Bolus
5-FU/
ロイコボリン
(Mayo Clinic) | 10 | 2028 | 6.7 |
Source: Elfring G et al., ASCO 2002,
Abstr. #530.
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この一般病院での初期死亡率の低さは、初回のイリノテカン投与量を患者の状態に合わせて減量したことと関連がある。約30%の患者はほとんどがperformance
statusが不良なため、初回治療量は減じた投与量で行われていた。
レポーター:
Andrew Bowser
| 日本語翻訳・監修: | 東京慈恵会医科大学内科学(血液・腫瘍)助教授
東京慈恵会医科大学附属病院血液腫瘍内科診療部長 薄井紀子 |
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