転移性乳癌はひとたびアンソラサイクリンまたはタキサンに抵抗性になると、その次の治療の選択肢はきわめて限られる。使用可能なひとつの選択肢はcapecitabineであり、米国では治療抵抗性の転移性乳癌に承認を受けている(日本では未承認)。Capecitabineの有効性は期待できるが、手足症候群のような副作用を伴うことも事実である。
したがって、アンソラサイクリンまたはタキサン抵抗性の転移性乳癌に対する新しい有効な治療法を確立する必要がある。そのような薬剤のひとつがトポイソメラーゼI阻害剤のイリノテカンである。イリノテカンは前臨床試験で乳癌に対する効果が証明されている。さらに、日本の小規模の臨床試験では転移性乳癌に対する有効性が示唆されている。
North Central Cancer Treatment Group(NCCTG)のPerez博士らは、転移性乳癌における有効性の可能性を明らかにするために無作為比較第II相試験を行った。
この試験には102例の転移性乳癌が含まれ、患者は術後補助化学療法1レジメンまで、転移性乳癌に対しては化学療法2レジメンまでを対象とした。前治療として少なくとも1レジメンはアンソラサイクリン、またはタキサンが使用されていなければならないとした。
多くの患者は2または3レジメンの化学療法を受けていた。(CPT-11 weekly投与の55%、3週毎投与の73%)また、多くはアンソラサイクリンとタキサンの両方を受けていた(weekly投与の58%、3週毎投与の63%)。
ひとつのArmはweeklyイリノテカン(100mg/m2をweeklyに4週投与、2週休薬)を6週毎に繰り返した。もうひとつのArmはより高投与量の240mg/m2を3週間毎に繰り返した。
今回のASCOでは対象患者の約半数について毒性が評価された。もっとも一般的なGrade3、4の毒性は好中球減少であり、weekly投与群の32%に、3週毎投与群の36%に認めた。Grade3の発熱性好中球減少はweekly投与群の4%に、3週毎投与群の6%に認めた。Grade4の発熱性好中球減少はなかった。
毒性*
- | A群(例数=52) | B群(例数=51) | 毒性 | Grade3
| Grade4 | Grade3
| Grade4 | 呼吸困難 | 2(14%) | 0(0%) | 6(12%) | 3(6%) | 悪心 | 3(6%) | 0(0%) | 8(16%) | 0(0%) | 倦怠感 | 3(6%) | 0(0%) | 3(16%) | 1(2%) | 好中球減少 | 10(19%) | 7(13%) | 6(12%) | 12(24%) | 下痢 | 7(13%) | 2(4%) | 6(12%) | 0(0%) | 嘔吐 | 2(4%) | 0(0%) | 9(18%) | 1(2%) | 発熱性好中球減少 | 2(4%) | 0(0%) | 3(6%) | 0(0%) |
* NCI-CTC
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Perez博士はこの102例の研究について奏効率を発表した。アンソラサイクリンまたはタキサンの前治療歴のある患者において、奏効率は15〜18%であった。興味あることに、アンソラサイクリンとタキサンの両方を受けていた患者において、weekly投与群30例中27%の奏効率(30例中8例)、3週毎投与群(32例)中13%の奏効率を報告した。
奏効度
- | A群例数(%) | B群例数(%) | 完全寛解(CR) | 1(2%) | 0(0%) | 部分寛解(PR) | 11(21%) | 7(14%) | 奏効 | 12(23%) | 7(14%) | 96%信頼区間
| 13〜37% | 6〜26% | アンソラサイクリンとタキサンの前治療を有する患者 | 8/30(27%) | 4/32(13%) | 奏効期間
中央値(範囲) | 4.0ヵ月 (1.9〜15.9) | 4.2ヵ月 (3.1〜13.9) | 6ヵ月生存(95%信頼区間) | 63%(51〜78%) | 67%(55〜82%) |
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もし、この結果が第III相試験で確認されれば、治療抵抗性の転移性乳癌に対して新しい治療の選択肢をもつことが可能となる。その治療は他の選択肢に比べて限られた毒性と良い奏効率をもっている。
Perez博士らは、イリノテカン後capecitabineの順次投与、capecitabine後イリノテカンの順次投与、両方の併用療法を比較する3群の第III相試験を計画している。
レポーター:
Andrew Bowser
日本語翻訳・監修: 癌研究会附属病院化学療法科副部長 伊藤良則
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