McDougle博士は、児童期発症の分裂病というまれな病態に対するclozapine対ハロペリドール二重盲検試験をまずとりあげた。Clozapine(176±149mg/day)が10例に、ハロペリドール(16±8mg/day)が11例に6週間投与された。陽性症状、陰性症状ともに、clozapineの有効性がハロペリドールを上回った。ただし、clozapine投与例中、5人に好中球減少(<1500)が、2人に痙攣発作がみられた。
リスペリドンを用いた二重盲検試験は多い。精神遅滞を伴わない行為障害に対するプラセボ対照の試験では、20人の外来患者(男性が19人で、平均年齢9.2±2.9歳)に10週間投与された。評価尺度として、一次的には攻撃性を指標とする評価尺度(RAAPP)が、二次的にはClinical
Global Impressions-Severity(CGI-S)およびCGI-Improvement(CGI-I)が使用された。外来での行為障害への二重盲検試験は脱落者も多く困難だが、結果はリスペリドン投与者の方がプラセボ投与者より脱落は少なく、いずれの指標でもごく少量のリスペリドンが有効であった。
行為障害:リスペリドンの結果
・ | リスペリドンの最終用量域=0.75〜1.50mg/day | ・ | 最終第10週の評価スコア |
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- | Placebo | Risperidone | RAAPP | 3.54
(SE 0.56) | 2.24
(SE 0.42) | CGI-S
| 4.92
(SE 0.68) | 2.32
(SE 0.50) | CGI-I | 3.60
(SE 0.45) | 1.80
(SE 0.33) |
Findling RL et
al. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2000;39:509-516.
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精神遅滞を伴う行為障害に対するリスペリドンとプラセボの無作為比較試験では、中等度以上のIQ(35〜84)の行為障害患者が対象とされた。

最終のCGI-Cスコアの比較では、リスペリドンの有効性が有意に示された。不安感、多動、自傷/常同性を指標とする評価尺度でも有効性が示された。ほとんどが1.5mg未満の少量投与で、主な副作用は眠気、食欲亢進、高プロラクチン血症、体重増加であった。しかし、注意集中や言語記憶での差異は認められなかった。
リスペリドンは児童・思春期の自閉症患者に対しても、プラセボ対照の二重盲検試験が行われている。101人を対象に多施設で2〜4ヵ月毎に評価し、反応群と非反応群を区分して8ヵ月までフォローする大規模かつ詳細な計画で、結果、リスペリドンの有効性は69.4%(プラセボで11.5%)と過去のオープン試験での値をも上回った。
Ziprasidoneのトウレット症候群への有効性に関して、やはりプラセボ対照の二重盲検試験が行われており、全ての評価尺度ではないが有効性が示唆されている。
総じて、非定型抗精神病薬の有効性と忍容性は、他の障害に対しても、あるいはオランザピンやクエチアピンも含めて、多くのオープン試験で示唆されている。McDougle博士は今後の対照比較試験でのそうした結果の追認と安全性を示すデータが不可欠であるとした。
レポーター:
緑誠会光の丘病院理事長・院長 馬屋原 健
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