大人と対比した子どもの診断上の特徴には、力動的であること(大人は静的)、複合性が構築されつつあること(大人は達成されている)、社会状況や環境に依存的であること(大人は非依存的)、障害が多型性を示して発展すること(大人は同型で固定化)などが挙げられる。この点では、発達精神医学の視点が不可欠である。
幼少期の難しい気質にADHDが加わり、さらに親の虐待によるPTSDや薬物乱用が重なって、思春期の行為障害に発展し、青年期の反社会性人格障害やADHDが残るモデルを示した。ここで、早期介入への期待を示した。
Steiner博士は、障害が多型性を示し発展する一連の流れを双極性障害モデルで説明した。生まれもった気質の上に幼少期のADHDが始まり、そして気分の調節が困難な(しばしば抑うつ・焦燥感・反応性の低下)学童期の段階を経て、思春期に双極性障害を発症するモデルである。
ここでの重要な示唆は、症状の多型性をつなぐ病理(プロセス)を同定すること、そして単なる重複診断に終わらせず、一次性の障害を探索することである。
Steiner博士は、最後にスタンフォードでの双極性障害患者の子の研究(Bipolar Offspring Study)の成果を報告した。いずれかの親が双極性障害である子60人(平均年齢11.1歳)が対象で、51%に1軸診断の障害を認めた。ADHDが27%と最も多く、大うつ病/気分変調症15%、双極性障害/気分循環症13%と続いた。深い精神病理が認められ、相互の重複例も多かった。
児童行動チェックリスト(CBCL)の結果では、双極性障害をもつ子の多領域での機能欠陥が、他の障害をもつ子と比べて際立っていた。これは双極性障害の発症をよりprodromalなレベルで早期発見して予防できる可能性を展望している。
家族環境も危うい傾向がみられた。気質特性として、柔軟性の欠如、気分調節の困難さ、課題遂行能力の低下が診断に先行して認められ得る可能性が示唆された。
レポーター:
緑誠会光の丘病院理事長・院長 馬屋原 健
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