抗精神病薬を服用している患者の処置を行う看護師として、Ms. Jarboeは患者の服薬遵守の問題に強い深い関心をもっていると述べた。精神分裂病では他の精神科疾患に比べて治療を継続しないものが多く、退院後1年以内に治療を継続しないのは50%、2年以内には75%にのぼる。また再入院の40%が治療中断のためである。したがってアドヒアランスが乏しいと再発による強制的治療の必要が生じる。服薬を中断した患者の75%が1年以内に症状が悪化しているし、症状の悪化が繰り返されると経過と予後が悪くなる。
この長期予後を改善するものが、適切な治療者患者関係(治療同盟)であり、非定型抗精神病薬でありデポ剤である。治療同盟は患者の理解力を評価し、患者の治療態度を把握し、患者に病気の性質を伝え、患者への共感、誠実、尊敬を示すことなどによって形成されるものである。
一方、デポ剤を投与することは患者が規則的に治療チームに接する機会をもつことで、これによって治療同盟が形成されるという側面もある。デポ剤にはスティグマを与えること、副作用の心配、痛み、自由を奪われる感じがあることなどの問題点があることはあるが、毎日投薬する必要がないなど、アドヒアランスへの良い影響や、簡便な治療であるため患者のQOLの改善に役立つという側面がある。
さらに患者の独立性を高める、アドヒアランスについての不確実を減少させる、継続的治療を提供する、血清濃度を予想できる、薬剤の血中レベルの変動をおさえる、などの利点があり、また再発の危険性を減らすことが期待される。したがってデポ剤はアドヒアランスの改善に必要である。
以上のことからMs. Jarboeは、最初の長期作用非定型抗精神病薬―注射型リスペリドンは、治療者患者間の治療同盟(リハビリ同盟)を強化し、転帰を改善し、再発予防のために役立つことが期待される、と締めくくった。

レポーター:
帝京大学医学部精神科教授 南光進一郎
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