長期作用非定型抗精神病薬療法の研究
Research Experience with Long-Acting Atypical Antipsychotic Medication

Samuel J. Keith, MD
University of New Mexico
Albuquerque, NM, USA


長期作用型抗精神病薬(デポ剤)は患者の症状寛解を維持し、再発を防止し、機能レベルを改善するなどアドヒアランスを改善する可能性がある。この可能性を最大限に高めるために治験プロトコールが検討されている。

これに先立ち心理社会プログラムのもとで服薬を確実にされた集団で、いかなる治療が最適かを調べるために、2種類の心理社会療法(積極的自宅家族介入と毎月のグループ会合)と3種類の薬剤量(標準量、低用量、プラセボ)を組み合わせて、大規模多施設二重盲検法が行われた。その結果、2年後の再入院率は、心理社会療法間で違いはなく標準量がプラセボより優れているだけだった。すなわち薬物療法の限界、心理教育療法の限界が明らかになった。この結果は患者が服薬を十分には行っていないためではないだろうか。このことからKeith博士は効果が優れて副作用の少ない非定型抗精神病薬であって、安定的に持続して効果を表すデポ剤が必要とされていると述べた。

そこで長期作用の注射薬リスペリドンの治験を行った。伝統的なデポ剤は油性であるが、注射薬リスペリドンは水溶性でポリマーの表面に吸収され、徐放性である。急性期患者における12週間のプラセボとの二重盲検比較試験では25mg、50mg、75mgともPANSSはプラセボに比べて有意に改善したが、とりわけ25mg、50mgで優れていた。これは症状が固定している患者における1年間の試験でも同様の結果であった。注射時の痛みを長期作用抗精神病薬フルフェナジンと比較したところ、リスペリドンでは痛みの程度が半分であった。

以上のことから長期作用リスペリドンについての初期調査を行ったKeith博士は、これが有効であり副作用も少ないこと、すなわち長期作用抗精神病薬と非定型抗精神病薬の両者の長所を有していることが示された、と結論付けている。


レポーター: 帝京大学医学部精神科教授 南光進一郎