精神分裂病の薬剤選択:服薬遵守の意味
Pharmacologic Options for Schizophrenia: Implications for Compliance

John M. Kane, MD
Hillside Hospital
Glen Oaks, NY, USA


寛解した後5年以内にどれくらいの精神分裂病が再発するであろうか。Kane博士はこの問いから話を始めた。ヒルサイド病院での調査では80%を超える率であった。抗精神病薬を中止すると再発危険率はどれくらい上がるか。ヒルサイド病院の初回エピソードの患者では、危険率は5倍近かった。同じ調査で抗精神病薬の中止と関係する因子は、最初の16週以内に出現したパーキンソン症状で、服薬不遵守をもたらす。

ところで、長期作用従来型抗精神病薬(デポ剤)は経口剤に比べて在院日数を減少させ、再発危険率を減少させることが知られている。デポ剤には以下のような利点がある。薬が確かに投与されていることがわかる、血漿濃度を予測できる、注射を忘れても急な退薬とはならない、退薬しているのが誰かがすぐにわかる、患者とスタッフが定期的に会える、毎日あるいはそれ以上に服薬する必要がない、などである。

多くの患者はデポ剤注射を望んでいる。問題点としては、医師も看護師も患者も針を使いたくない、過剰に支配されている感じがある、副作用が出たときに元に戻すことができない恐れがある、などである。さらに従来型抗精神病薬デポ剤では、経口より副作用が多い、古臭い、強制的・侵入的な感じがある、注射はいやだし、あとが痛い、など薬自体の問題がある。

また従来型抗精神病薬に対して非定型抗精神病薬は再発危険率と再入院を減少させるとともに、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアのような副作用を来すことが少ないことが知られている。このようなことからKane博士は、今後は非定型抗精神病薬の長期作用型薬剤に期待される、と述べた。

最後にKane博士は、精神分裂病治療を成功させるには効果的で忍容できる薬の継続的な投与が鍵となる、として、長期作用注射型非定型抗精神病薬は症状をコントロールし、再発と再入院の率を下げる可能性がある、リスペリドンの注射剤はその一つだ、と結んだ。


レポーター: 帝京大学医学部精神科教授 南光進一郎