攻撃性が持続する精神分裂病の治療
Clinical Management of Persistent Aggressive Behavior in Schizophrenia

Leslie L. Citrome, MD
New York University
New York, NY, USA


暴力は我々の文化に浸透している。すべてではないにしても精神疾患を抱える人の中には暴力による問題を起こす人がいる。精神分裂病患者では約50%が暴力行為に至る。これは精神疾患がない場合の5〜6倍の確率である。物質乱用が共存していると暴力行為の可能性はさらに高くなる。暴力的であったり示威的な行動をとる患者はしばしば精神科病棟へ入院することになる。入院治療に際しては、共存する疾患がないかどうか評価していく必要がある。

こうした患者の治療は潜在する病態による。ロラゼパムを用いた短時間の鎮静は急性期の興奮状態にとって安全かつ効果的である。しかしこうした鎮静は治療の技法としては適切ではない。急性期の興奮状態に対する治療として推奨されるのはclozapine、オランザピン、クエチアピンなどの非定型抗精神病薬の筋肉内注射剤である。長期的な治療としては衝動性の抑制がはかられる。これにはバルプロ酸、カルバマゼピン、リチウムなどの気分安定薬が用いられる。バルプロ酸は興奮状態の強さ、頻度を和らげることや衝動の抑制を目的として、しばしば神経遮断薬に併用される。プロプラノロール、ナドロールなどのβ遮断薬は精神分裂病や興奮状態に対し抗精神病薬の補助として用いることができるかもしれない。ただしβ遮断薬による興奮の抑制効果が得られるまで、4〜6週間かかることがある。クロナゼパムなどのベンゾジアゼピンはこうした患者には効果がなく、攻撃性を悪化させることがある。最近の研究ではセロトニンを介した神経伝達系が攻撃的行動と関係している可能性が指摘されている。そのため、これらの患者の治療として、fluoxetineやcitalopramを含むSSRIを補助的に用いることができるかもしれない。

Citrome博士は157人の患者を対象とした二重盲検試験を行い、ハロペリドール、clozapine、リスペリドン、オランザピンを14週間投与したデータを示した。試験のデザインは以下の通りである。

予後をはかる指標としては、PANSSの敵意の項目を用いた。ここではNo.1は敵意が全くないのに対し、No.7は非常に強い敵意を示している。このデータではclozapineが患者の敵意を明らかに和らげていることがわかる。一方、リスペリドンとハロペリドールは敵意には効果がなかった。

これらの結果から、Citrome博士はclozapineは定型的抗精神病薬に比べ精神分裂病患者の攻撃性への効果が高く、精神分裂病・分裂感情障害患者の攻撃性を和らげる効果はリスペリドンとハロペリドールに勝っている、と結論している。


レポーター: Andrea R. Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学藤が丘病院 山下さおり