OCDやPDなどの不安障害に共存する精神分裂病の治療は容易でない。この共存の背景にある生物学的メカニズムは、未だ不明である。臨床的には、不安障害の共存の有無によって治療法が異なるだろう。したがって、Hwang博士は不安障害の共存する精神分裂病の診断を正確に下すことが治療には不可欠であるという。
Hwang博士によると、DSM-V-Rが発表される前は診断基準に精神分裂病と不安障害が共存しているという病態が含まれていなかったため、見逃しや誤診があったのではないかという。結果として、精神分裂病に共存するOCDやPDははじめからめったに起こらず、臨床的な重要性もないとみなされていた。今日では精神分裂病に不安症状が共存することは、2つの疾患の共存という範疇で捉えられたり、精神分裂病のもつ様々な病態の、1つの次元として捉えられたりしている。この病態を正確に定義するにはさらなる研究が必要である。
最近の臨床試験によると、精神分裂病にOCDやPDが共存した場合、明らかに予後が悪いことが示されている。これらの不安障害が共存する患者に対しては、綿密な臨床的評価と個別的な治療アプローチが最も効果的であったという。精神分裂病にOCDが共存する割合は1920年代には3%だったのが1990年代には9%以上と増加しており、この指摘は重要である。
精神分裂病にOCDが共存する場合、三環系抗うつ薬であるクロミプラミンを投与する。クロミプラミンはOCDの症状を改善し、精神分裂病には影響を及ぼさない。Hwang博士によるとこの療法が有効でない患者もいるという。PDが共存する精神分裂病にはPDの治療が有効かもしれない。通常はSSRIが用いられる。これを投与するときは低用量から開始し、数週間かけて増量していく。
Hwang博士は最近、精神病の初発例における不安障害の出現頻度を調べた。これによると精神病の初発例では、OCDとPDの出現する率が高いという。このデータによると、OCDは精神分裂病、分裂感情障害、大うつ病に共存することが多いが、PDは大うつ病と共存することが最も多いことがわかる。
24ヵ月間に発症した、強迫症状とパニック症状
- | 分裂病/分裂感情障害
| 双極性障害
| 大うつ病
| 強迫症状 | 9.1% | 3.0% |
9.8% | パニック症状
| 6.1% | 7.0% | 18.0% |
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これらのデータでは、共存している病態を正しく評価し、その症状に対処し、患者とラポールを形成することの重要性が示されている。
レポーター:
Andrea Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学藤が丘病院 山下さおり
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