Siris博士によると、精神分裂病にみられる抑うつ状態は患者や家族の苦痛を強め、これが自殺につながることもある。精神分裂病患者の約10%は自殺により死に至っており、重大な問題であるといえる。
精神分裂病患者の抑うつ状態を診断するには、まずその他の疾患を除外する必要がある。貧血、癌、肺疾患、自己免疫疾患、内分泌疾患など数々の病気はうつ病に類似した状態を引き起こす。抑うつ状態の鑑別診断に際しては、以下の因子も考慮する―共存する疾患;アキネジア、アカシジア、気分変調、無快感症などの神経遮断薬による副作用;いわゆるドラッグ、アルコール、ニコチン、カフェインなどの急性または慢性的な乱用あるいは中断。他にも考慮すべき事柄として、急性または慢性の心因反応、陰性症状、
"demoralization syndrome"などが挙げられる。治療者は、抑うつ状態が本質的には、生物学的あるいは心理的な背景に基づく、あるいは精神病エピソードから生じる、機能不全状態により構成されるものである可能性を認識すべきである。また、精神分裂病とは別に感情障害の素因があったり分裂感情障害に罹患している可能性もある。
精神分裂病患者が抑うつ状態にあると診断されれば、様々な治療法が用いられる。まず考えるべきは、神経遮断薬の漸減または調整と、抗精神病薬を非定型のものに置き換えることである。もう一つの方法は抗パーキンソン薬や三環系抗うつ薬の追加である。効果があればSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)など非三環系抗うつ薬やベンゾジアゼピン、プロプラノロール、電気けいれん療法を用いることもある。リチウムや抗てんかん薬も検討すべきである。これらの処方は単独、または心理社会的アプローチとの併用で行われる。
Siris博士によると、治療の第一選択としては、神経遮断薬の減量と非定型抗精神病薬への変更、またはイミプラミンなどの三環系抗うつ薬の追加を行うという。イミプラミンを追加して6週間後に患者はCGI(clinical
global impression)で有意な(p<0.02)改善を得ている。プラセボを投与した群ではCGIは全く、あるいはほとんど変化しなかった。

レポーター:
Andrea R. Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学藤が丘病院 山下さおり
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