治療や予防が絶え間なく改善されつつある中で、動脈硬化性冠動脈疾患(CHD)はすべての先進国で最も重要な単独死亡原因となっている。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)はCHDの治療に最もよく用いられており、全世界で1年間におよそ500万人の患者に行われている。Clopidogrelはアスピリンとともに今日PCIを受ける患者に通常治療の一環として投与されているが、常に2〜4週間の短期治療に限られている。
最近まで、経皮的インターベンション治療の対象患者が長期的に動脈硬化性イベントのリスクをどの程度有するかという点に関しては、十分明らかではなかった。Clopidogrel
for the Reduction of Events During Observation(Clopidogrel治療による追跡期間中のイベントの軽減[CREDO])試験はPCIを受ける患者でclopidogrelの長期投与の効果を検討した、初めての無作為試験である。
米国とカナダの99の病院がこの無作為二重盲検試験に参加し、長期clopidogrel投与によるPCI患者の血栓性イベントの予防効果が評価された。両国から2,116例の患者が組み入れられ、実薬群とコントロール群に割り付けられた。
実薬群ではPCIの開始前3〜24時間からclopidogrelが初期量として300mg投与され、コントロール群では対応するプラセボが投与された。両群とも、PCI施行時から術後28日まではclopidogrelとアスピリンが併用された。その後は1年間にわたって、実薬群ではclopidogrelとアスピリンの併用、コントロール群ではプラセボとアスピリンの投与が続けられた。
予後に関する主要評価項目は死亡、心筋梗塞または脳卒中の複合発生頻度であった。これらの患者群において、上記のリスクは長期clopidogrelを受けた患者で27%の相対的低下が認められた(p=0.02)。

絶対的リスクとしては3%(11.5%から8.5%)減少したことになる。重要なことはこの有効性はすべてのサブグループ解析でも等しく認められたということである。このサブ解析は女性と男性、糖尿病患者と非糖尿病患者、急性冠症候群の有無、PCI施行時のGP
IIb/IIIa阻害薬による治療の有無などに関して行われた。
さらに、複合エンドポイントにみられた有効性の程度は、個々のエンドポイントでみられた有効性とほぼ同一であった。死亡、心筋梗塞、脳卒中に対する相対的リスク減少率は約25%であった。
軽度の出血の頻度は両群で差がなかった。しかし大出血は有意ではないが(実薬群で)増加する傾向がみられた。ほとんどすべての大出血は侵襲的な治療が行われた群で発生した。実薬群とコントロール群両者で約4%の患者がバイパス手術を受けた。バイパス手術を受けた患者の半数以上は大出血の既往がある患者であった。
Steinhubl博士は、これらの結果は臨床的には著明な意味をもつと語った。この結果からすると、経皮的インターベンションを受ける患者100万人にclopidogrelを投与した場合、1年間で50,000の心臓発作、脳卒中、あるいは死亡が救われることになるという。さらに長期にわたってclopidogrel治療を継続すると、もっと大きな有効性がもたらされる可能性が期待される。
レポーター:Andrew Bowser
日本語翻訳・監修:浜松労災病院院長 篠山重威
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