心房細動に対する非薬物療法の初期の目的は心拍コントロール(rate control)が中心であった。この方法では、房室結節のアブレーションを行いペースメーカの植え込みを行う方法が一般的で、それ以外に房室結節の修飾術が行われていた。
非薬物療法の最近の方向としては、洞調律の維持を目標にするようになった。これらには、新しいペーシング手法、植え込み型除細動器、外科的治療、カテーテルアブレーションなどが含まれる。
従来の心房ペーシングでも心房細動の出現を抑制させる可能性が指摘されていた。しかし、ある研究では60%以上の抑制率を示したが、他の研究では無効というように、その有効性ははっきりしなかった。
心房overdriveペーシングによる心房細動の抑制
研究名 |
患者数 |
結果 |
Lam,
2000 |
15 |
無効 |
PROVE,
2000 |
78 |
34%減少 |
Ricci,
2001 |
61 |
全体として無効;DDDR%ペーシングの少ない場合に減少 |
Israel, 2001 |
325 |
無効 |
Gold, 2001 |
75 |
無効 |
ADOPT-A, 2001 |
399 |
60%
vs. 45%減少 |
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心房・心室除細動器は心房・心室のペーシングが可能であり、抗頻拍ペーシング、低エネルギーショック、高エネルギーショックを用いて心房・心室の頻脈性不整脈を治療することができる。
心房除細動器の除細動閾値はリードの組み合わせで決定し、ほとんどの症例では4〜7Jの範囲にある。しかし、このエネルギー量では苦痛を感じることが多いため、心房細動の発生を減らすための新しいペーシング法の開発が進められている。
この目的でJewel AFを用いた研究が行われた。537人の心室性不整脈と心房性不整脈を認めた患者にJewel
AFが用いられた。Jewel AFは3種類の異なった高頻度ペーシングを行うことができる。また頻拍周期と安定性から心房細動と心房頻拍を分けて記録することができる。心房高頻度ペーシングによって、心房頻拍と心房細動のほとんど半分のエピソード(48%)で停止が可能であった。ただし、残念なことに多くの患者ではショック治療はまだ必要であった。
最近示されたもう一つのJewel AFを用いた研究では、ペーシング治療を用いることによって、1ヵ月あたり53時間あった心房細動が6.2時間に減少したことが示された。しかし、実際に恩恵を得たのは25%の患者であって、残りは1ヵ月あたり1時間以内の減少であり、あまり大きな変化は生じなかった。
これらの研究の結果では、ペーシング治療によってある程度心房細動を減少させる可能性は示されたが、多くの患者では心房細動は完全には抑制できなかった。
症状を抑える最も良い方法は心房細動そのものを治療することである。そこで肺静脈を起源とする心房細動に対するアブレーションが行われている。
アブレーションが成功した場合、臨床的に予後は良く、QOLも改善する。いくつかの研究では肺静脈隔離で70〜80%の治癒率が得られると報告している。今までのところ、年齢・性別・左室駆出率・心房細動の持続等の因子と手技成功との間に関連はないといわれている。
発作性心房細動に対する肺静脈隔離
研究名 |
患者数 |
方法 |
治癒率 |
Marrouche,
2002 |
111 |
Isolation
|
88% |
Oral,
2002 |
58 |
Isolation |
70% |
Pappone,
2001 |
179 |
Isolation |
85% |
Wharton, 2000
|
113/67 |
Focal/Isolation
|
72%/75% |
Haissaguerre,
2000 |
225 |
Focal/Isolation
|
70% |
Chen, 1999 |
79 |
Focal |
86% |
Gerstenfeld,
2001 |
71 |
Focal |
33% |
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その一方でアブレーションでは、心穿孔・肺静脈の解離・血管損傷・脳卒中などの合併症が存在する。なかでも問題なのが肺静脈狭窄である。重篤な狭窄は
5%以内の患者に出現するといわれる。25%以上の患者では狭窄はほんのわずかである。症状は強い呼吸困難と気道からの出血を伴う咳である。
この治療法は、持続性あるいは慢性の心房細動よりも発作性心房細動において有効であるとされているが、持続性心房細動や慢性心房細動にも有効なアブレーションが開発されることが望まれる。
近い将来に、発作性心房細動だけでなく持続性心房細動や慢性心房細動に有効な外科的治療・アブレーションが開発されるであろうが、現時点ではすべての患者に行われるべき最初の治療は薬物療法である。
レポーター:Andrew
Bowser
日本語翻訳・監修:浜松労災病院循環器科副部長 田口敦史 |
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