Remme博士はCarvedilol Ace-Inhibitor Remodeling Mild CHF EvaluatioN(CARMEN:カルベジロールとACE阻害薬による軽症心不全のリモデリング治療の評価)試験のサブ解析の結果を報告した。CARMEN試験ではβ遮断薬カルベジロールが単独またはACE阻害薬との併用でCHF患者にどのような影響を与えるかが検討された。
この試験の作業仮説は、心臓リモデリングに対する効果という点でβ遮断薬はACE阻害薬に取って代わることができるのではないか、ということであった。過去においてβ遮断薬の心臓リモデリングに対する効果は常にACE阻害薬との関連で検討されてきた。しかし、この効果を達成するのに併用が必須であるかどうかは明らかでない。さらにβ遮断薬はACE阻害薬と同等またはそれ以上の効果をもつ可能性もある。
この問題を検討するために、CARMEN試験には13ヵ国から軽度で安定した心不全を有する572例の患者が登録された。患者の平均年齢は62歳で81%が男性であった。このパラレルグループ無作為試験では、カルベジロールとエナラプリルの併用、カルベジロール単独投与、エナラプリル単独投与の3群に分けられた。試験に登録される前にはすべてのβ遮断薬とACE阻害薬の服用は中止された。試験がスタートする前には約65%の患者でACE阻害薬が投与されていたが、β遮断薬の投与はわずかに6%に止まっていた。試験期間は18ヵ月であった。
カルベジロールの量は目的量の25mg 1日2回投与まで次第に増量された。エナラプリルも10mg 1日2回投与の目的量まで段階的に増量された。併用群では先にカルベジロールを増量し、続いてエナラプリルの増量が行われた。
主要エンドポイントは18ヵ月における左室収縮末期容積係数の変化であった。Remme博士はACE阻害薬の投与を受けた320例の患者においてこの主要エンドポイントのサブグループ解析を行った結果を発表した。左室収縮末期容積係数はカルベジロール群で4.7m</m2の減少がみられ、カルベジロールとエナラプリルの併用群でも同じく減少がみられた。エナラプリル単独投与群では左室収縮末期容積係数はわずかに増大した。
試験開始前にACE阻害薬が投与されていた患者:
ベースラインから18ヵ月までの
左室収縮末期容積係数の平均的変化
|
変化 |
p値 |
カルベジロール |
-4.7
m</m2 |
0.006 |
カルベジロールと
エナラプリル |
-6.0
m</m2 |
0.001 |
エナラプリル |
+0.6
m</m2 |
NS |
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ACE阻害薬が投与されなかった159例の患者では、カルベジロールとエナラプリルの併用投与を受けた患者で左室収縮末期容積係数の有意な減少がみられた。
以前にACE阻害薬が投与されており、この試験でカルベジロール単独またはカルベジロールとエナラプリルの併用投与を受けた患者のサブグループでは左室駆出率の改善がみられたが、以前にACE阻害薬が投与されておらず、この試験で併用投与が行われたサブグループの患者では左室駆出率の改善はさらに有意であった。
全体的な安全性と忍容性のプロフィ−ルには差がみられなかった。有害事象は各群で4分の3の患者でみられた。各群で少なくとも70%の患者が治療を完了した。
Remme博士は、カルベジロールとACE阻害薬の併用療法は患者が過去にACE阻害薬が投与されていたかどうかには関係なく、左室のリモデリングと機能に有利な影響をもたらす、と語った。
ACE阻害薬をカルベジロールに置換した場合でもACE阻害薬を持続投与した場合とは対照的に心臓リモデリングの有意な改善がみられた。治療を変えても副作用が増加することはなかった。
最近のガイドラインでは、心不全患者が忍容性が悪かったり、また別の理由でACE阻害薬を中止せねばならなくなった時にはアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用することが勧告されている。博士は、この試験結果からカルベジロールもACE阻害薬の中止を余儀なくされた場合の代替治療薬に十分なりうることが示唆される、と述べた。
ガイドラインではまずACE阻害薬を投与し、それでもなお症状が持続する場合にのみβ遮断薬の投与を開始するように勧告されている。しかし、博士はこの治療の開始の遅れに反論を述べた。CARMENの結果からは、ACE阻害薬とカルベジロールをできる限り間をおかないで投与しても有効で安全であることが示唆される。
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