臨床家は軽症心不全(CHF)の治療の第一選択薬としてACE阻害薬を広く受け入れている。ACE阻害薬が最優先の治療法となったのは、主にACE阻害薬が臨床試験でまず最初に評価された治療薬であった理由によるところが大きい。しかし、カルベジロールもまた心不全の進行を防止し、リモデリングを逆転させる上で最優先の治療となりうると考えられる。
CARMEN試験の目的は、軽症心不全の第一選択治療は何が何でもACE阻害薬の使用であるという一般的な風潮に挑戦することであった。この試験ではカルベジロール、エナラプリル、および両者の併用の比較が行われた。治療期間は18ヵ月であった。
このパラレルグループ無作為試験にはヨーロッパの13の国から479症例が登録された。すべての患者は軽度のCHFを有し、左室駆出率は40%以下であった。ほとんどの患者(65%)はNYHAの機能分類でII度、平均年齢は62歳、81%が男性であった。
左室リモデリングに対する影響は、経胸郭的心エコー図をベースライン、6、12、そして18ヵ月の間隔で検査することによって評価された。この試験の主要エンドポイントはベースラインから18ヵ月までのリモデリングに関するパラメーターの変化であった。
次の図はカルベジロールとエナラプリルが併用された群で左室のリモデリングと機能に有意な改善がみられたことを示す。
さらに、左室リモデリングの改善はカルベジロールを単独、あるいはエナラプリルと併用して投与された患者すべてで認められた。18ヵ月目に左室駆出率は併用群で約3%増加した(ベースラインに対してp<0.001)。これらの結果はエナラプリル単独投与群ではみられなかった。

安全性と忍容性は3つの治療群すべてできわめてよく似たものであった。重症の有害事象はカルベジロール群の29%、カルベジロールとエナラプリルの併用治療を受けた群の28%に認められた。中止を余儀なくされた有害事象は両群とも18%の患者にみられた。Remme博士はさらにカルベジロールとエナラプリル群で忍容性に差はなかったことを付け加えた。
博士は、これらの結果はまずACE阻害薬を投与し、その後でもまだ患者の症状が持続する時に初めてβ遮断薬を処方するという従来の標準的治療法に挑戦を挑むものである、と述べた。最近、米国とヨーロッパ両者のガイドラインではACE阻害薬が第一選択薬とされている。博士は1997年と2001年のヨーロッパ心臓学会のガイドラインの草稿に関与した人物である。今や、次のガイドラインでは最早ACE阻害薬を第一選択薬として使わなければならないと述べるべきでない、と彼は考えている。
試験に関与した研究者の言によると、この試験結果は臨床家にカルベジロールまたはその併用を最優先治療と考えるに十分な根拠を提供するという。今後の研究によって第一選択薬カルベジロールが特定の患者群で予後をより改善する可能性があることが示されねばならない。
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