新しい冠動脈病変を有する患者の治療におけるsirolimus溶出ステントの有効性を評価するカナダの多施設無作為二重盲検試験:C-SIRIUS
The Canadian Multicenter, Randomized, Double-Blind Study of the Sirolimus-Eluting Stent in the Treatment of Patients With De Novo Coronary Artery Lesions: C-SIRIUS
Erick Schampaert, MD
University of Montreal
Montreal, Canada

冠動脈再灌流治療の重要な問題点は血管の再狭窄のために治療を繰り返して行う必要があることである。再治療を防ぐために取りうる一つの対策は、リンパ球と平滑筋細胞の増殖を抑制するsirolimusを溶出するステントの使用である。

最近の臨床試験でsirolimus溶出ステントは内膜新生を抑制して主要心臓イベントを防止する上に期待がもてることが示された。Sirolimus-Eluting Stent(sirolimus溶出ステント:SIRIUS)試験の結果は2002年の9月に発表された。この無作為試験にはsirolimus溶出ステント(Cypher)かむき出しのメタルステント(Bx Velocity)が留置された1,058例の患者が登録された。8ヵ月目の追跡血管造影ではステント内再狭窄は3.2%で、コントロール群に比して91%の減少がみられた。病変内再狭窄は8.9%で、コントロール群より75%低かった。9ヵ月目のイベントフリーの生存率はむき出しのメタルステント80.7%に対して92.7%であった(p<0.001)。

The Canadian Multi-Center, Randomized, Double-Blind Study of the Sirolimus-Eluting Stent(sirolimus溶出ステントに関するカナダの多施設無作為二重盲検試験:C-SIRIUS)試験には最小動脈に長い狭窄が存在する100例の患者が登録された。各々の患者は長さ15〜32mmの単独の新しい冠動脈病変を有しており、すべてで狭心症または無症候性心筋虚血がみられた。

この100例の患者はsirolimus溶出ステントかBx Velocityステント治療に割り付けられた。すべての患者は2ヵ月間毎日clopidogrelの投与を受けた。血管造影による追跡は8ヵ月目に、臨床的追跡は9ヵ月目に行われた。主要エンドポイントは8ヵ月における病変内最小血管内径であった。

ベースラインの患者背景は両群で変わりなかった。ほぼ69%の患者は男性で、平均年齢は60歳であった。コントロール群で複数のステントが留置された患者が多かったが(34% 対 46%)、統計的に有意な差ではなかった。

Schampaert博士は8ヵ月目において、sirolimusステントによる治療を受けた患者では最小血管内径が40%大きかった、と報告した。この成績は統計的に有意なものであった。さらに、late lossに有意な減少がみられた。Sirolimusステント群で再狭窄を来した患者は1例もなかった。

病変内血管造影所見にも同様の傾向がみられた。この病変部位とは、ステント部位に加えて、その中枢部と末梢部それぞれ5mmずつをいう。最小血管内径は35%増加し、late lossの減少は85%、再狭窄の減少は95%であった。Sirolimus溶出ステント群でみられた再狭窄の1例は病変の中枢部のエッジに生じたものであった。この再狭窄はそのセグメントのlate lossが有意に減少したにもかかわらずみられている。

どちらの群でも少数の主要有害事象はみられた。その発生件数はsirolimusステント群で2例(4%)、コントロール群で9例(18%)であった(p=0.05)。両群で死亡やQ波を有する心筋梗塞はみられなかった。


9ヵ月目におけるMACE(主要心臓有害事象)
(臨床追跡は100%)


 
コントロールステント
(n=50)
Sirolimus溶出ステント(n=50)
p値
MACE * n (%)
9 (18%)
2 (4%)
0.05
死亡
0
0
1.00
Q MI
0
0
1.00
非Q MI
2
1
NS
TLR-PCI
9
2
0.05
TLR-CABG
0
1
NS
TVF **
9
2
0.05
亜急性閉塞
0
1
NS
後期ステント
血栓症
1
0
NS
 * MACE:死亡、MI(Q波の有無にかかわらず)、緊急CABG、臨床的TLR
  ** TVF:9ヵ月追跡における死亡、MI、またはTVR(標的血管再灌流)

臨床的な所見から標的血管の再灌流なしに生存したのはsirolumis溶出ステントグループで96%、むき出しのメタルステントで82%であった。このことは絶対リスクが14%減少した(p=0.027)ことを意味する。

症例数が100例と少ないことがこの試験の問題点である。それでも、sirolimus溶出ステントはリスクの非常に高い患者群でステント内再狭窄を阻止するのに有効であると思われる、とSchampaert博士は語った。

これらの結果は今や、初期の試験でみられたポジティブな有効性をこの患者群にも進展させるものである。

C-SIRUS試験のスポンサーはカナダのCordis, Johnson & Johnson社であった。