重症心不全と収縮期血圧の低下を伴う患者におけるカルベジロールの有効性と安全性:COPERNICUS試験の結果
Efficacy and Safety of Carvedilol in Patients with Severe Chronic Heart Failure and Low Systolic Blood Pressure: Results of the COPERNICUS Study

John L. Rouleau
Mt. Sinai Hospital
Toronto, Canada


COPERNICUS試験では、安静時あるいは最小限の運動で症状を来す2,289例の心不全患者が無作為にプラセボとカルベジロールに割り付けられた。対象患者は左室駆出率<25%、収縮期血圧≧85mmHgで、利尿薬と、ジゴキシンの投与の有無にかかわらずアンジオテンシン変換酵素阻害薬による治療を受けている症例であった。この試験はカルベジロール群で35%という著明な生存率の改善効果が示されたため途中で中止された。

COPERNICUS試験に登録された患者の中で、組み入れ時の収縮期血圧が132例(5.8%)では85〜95mmHg、264例(11.5%)では96〜105mmHgであった。収縮期血圧が低い(<96mmHg)患者は若年で、駆出率が低い傾向があった。収縮期血圧が低い患者は、高い患者(>125mmHg)に比して予後が有意に悪く(総死亡に関しては、P < 0.0001)、2年間の死亡率は約50%であった。生存率は収縮期血圧が>125mmHgの患者で最もよかった。同様に収縮期血圧が最も低い患者(<96mmHg)のほぼ80%で1年目に死亡か入院(すべての原因による)がみられており、収縮期血圧の上昇とともにイベントは少なくなる(P < 0.0001)。

Carvedilolはベースラインの収縮期血圧で分類したすべてのサブグループで死亡または心不全による入院のリスクを減少させた。治療の有効性の程度は収縮期血圧とは無関係であった(死亡率と死亡または心不全による入院に対する相互の影響はそれぞれP = 0.64とP = 0.80であった)。プラセボ群では、心不全増悪のリスクは血圧のレベルによって増加したが、そのリスクもカルベジロールが投与されたすべてのサブグループで同様の低下がみられ(相互の影響、P = 0.74)、有効性は完全に血圧とは無関係であることが示唆された。

予後のリスクを示す指標(ハザード比)カルベジロール:プラセボ
収縮期血圧
総死亡
死亡または心不全による入院
85〜95mmHg
0.77
0.74
96〜105mmHg
0.61
0.75
106〜115mmHg
0.65
0.78
116〜125mmHg
0.61
0.54
>125mmHg
0.60
0.68

永久脱落率はプラセボ群でもカルベジロール群でも同様にベースラインの収縮期血圧の増加とともに減少した。低血圧はプラセボ群よりカルベジロール群でより多かったが、治療効果が収縮期血圧が低いことによって変わることはなかった。

Rouleau博士は結論として次のように述べた。重症心不全患者にカルベジロールを投与する際に、治療前の血圧レベルによって有効性や安全性が変わることはない。したがって、収縮期血圧が≧85mmHgに保たれているかぎり血圧を基準にして患者を除外してはならない。また、カルベジロールの血管拡張作用が収縮期血圧の低い患者に悪影響をもたらすことはなかったし、むしろ治療によってもたらされた心不全増悪のリスクの軽減に貢献したと考えられた。