慢性心不全の治療においてβ遮断薬の使用は急速に増加している。しかし、心機能障害が高度に進行した患者に対する使用はなお躊躇されることが多い。これらの患者にはβ遮断薬は無効であるとか、有害事象が早期に出現する可能性が高いと考えられている。
左室駆出率が高度に低下した患者を解析に堪えるほど組み入れた臨床試験は少ない。最近、カルベジロールの累積生存率に対する前向き無作為試験(CarvedilOl
ProspEctive RaNdomIzed CUmulative Survival [COPERNICUS])が終了した。この試験のデータからβ遮断薬の高度心機能低下を有する患者に対する効果を検討する機会が与えられた。
COPERNICUS試験には、症状があり左室駆出率が25%以下の心不全患者2,289例が組み入れられた。これらの患者のうち約1/6(371例)では駆出率が15%以下であった。
この試験はカルベジロールが死亡のリスクの有意な減少をもたらすことが判明した時点で早期に中止された。プラセボに対する全体的なリスクの減少は35%であった(P
= 0.00013)。
この新しい解析によって、COPERNICUSに登録された患者のうち、高度心機能低下を有する群(15%以下)でも死亡率の改善は同様に明らかであることが示された。有効性の程度は心機能の低下がより軽度の患者でみられたものと変わりはなかった。
駆出率で分けたサブグループにおける主要臨床イベント
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左室駆出率16〜24%
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左室駆出率15%以下
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プラセボ
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カルベジロール
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プラセボ
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カルベジロール
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死亡
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17.4%
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9.7%
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23.8%
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18.9%
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死亡または入院
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50.7%
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40.4%
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59.9%
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47.2%
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ハザード比からはカルベジロールは両群に有効であることが示された。この有効性は事前に定めた多くの予後因子にわたって同様に認められた。この効果は高度に進行した心機能障害患者においても、さらに大きいとはいえないまでも同様に有効であるといえる。
6ヵ月間治療を継続した後で、患者による症状改善の印象が検討されたが、β遮断薬の投与を受けた群では改善したと感じている者が多かった。この所見は高度駆出率低下群でも、やや高値の駆出率を維持している患者でも同様にみられた。
COPERNICUSでカルベジロールの投与を受けた患者では治療導入時に低血圧、めまい、徐脈を来す患者が多かった。これらの患者は試験期間中に心不全の増悪を訴えることも少ない傾向があった。これらの反応のパターンと程度も駆出率で分けた2つのサブグループで同様であった。
最後に、カルベジロール治療群では治療を中止したり、有害事象を訴えることも少なかった。この効果も2つの駆出率サブグループで等しかった。
以上の所見から、慢性心不全においてカルベジロールは左室駆出率が極度に低下している患者においても有効で、忍容性も良いことが示唆される。
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