デンマークにおける急性心筋梗塞に対する血栓溶解療法と急性冠動脈血管形成術の無作為多施設協同試験
The Danish Multicenter Randomized Trial on Thrombolytic Therapy versus Acute Coronary Angioplasty in Acute Myocardial Infarction

Henning Andersen
Skejby University Hospital
Aarhus, Denmark


DANAMI(Danish Multicenter Randomized Trial on Thrombolytic Therapy versus Acute Coronary Angioplasty in Acute Myocardial Infarction)試験ではデンマークの5つの侵襲治療センターと24の紹介病院から1,572例の患者が登録された。この29の病院のサービスエリアはデンマークの人口540万の62%をカバーするものである。

DANAMI試験ではST上昇を有する心筋梗塞(MI)患者が線維素溶解療法とステント留置を伴う経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)に無作為に割り付けられた。線維素溶解療法は現場で100mgのtPA投与によって行われた。

侵襲治療センターで直接登録された患者は線維素溶解療法またはPCIのどちらかを受けた。紹介病院で登録された患者はそこで線維素溶解療法を受けるか、救急車でPCIができるセンターに転送された。最大転送可能距離は約95マイルであった。転送時間は3時間を超えるものではなかった。

主要エンドポイントは、30日以内の死亡、再梗塞、あるいは機能障害を残す脳卒中を複合したものであった。1,572例のすべての患者に対して、PCIは8%、血栓溶解療法は13.7%の患者に施行された(P = 0.0003)。1つのイベントを阻止するために治療を行わねばならない数は18であった。追加解析の結果、PCI群で再梗塞の有意な減少が示された(インターベンション群で1.6% 対 線維素溶解療法群6.3%、P < 0.0001)。

 DANAMI-2:30日以内の主要エンドポイント(n = 1,572)
 
線維素溶解
PCI
P値
死亡
7.6%
6.6%
0.35
再梗塞
6.3%
1.6%
< 0.0001
機能障害を残す脳卒中
2.0%
1.1%
0.15
複合エンドポイント
13.7%
8.0%
0.0003

紹介病院で登録された患者においても、直ちに血栓溶解療法を行った患者に比して転送してインターベンションを受けさせた患者のほうが、予後が良好であった。30日目における累積イベント発生率はインターベンション群で8.5%、血栓溶解療法群で14.2%であった(P = 0.002)。

この所見は侵襲治療センターで直接登録された443例の患者においても、この群の患者数が少なかったために有意差は同じとはいえなかったが、有効性は同様にみられた。DANAMI試験は侵襲治療センターで予定された登録の完了を待たずに打ち切られた。その理由は紹介病院で十分な症例が登録され、血栓溶解療法よりもインターベンションのために患者を転送したほうがよいことが明らかとなったからであった。

患者の転送は安全であると思われる。転送の途中で死亡したり挿管を必要とした患者はいなかった。心房細動、心室頻拍、心室細動の発生頻度はそれぞれ2.5%、0.2%、および1.4%であった。平均転送距離は35マイルであった。

これらの新しい所見によって、侵襲治療センターにおける一次的PCIが血栓溶解療法に優れるという以前の臨床試験成績が確認された。DANAMI試験には多くの異論もある。紹介病院から侵襲治療センターへ患者を転送することによってインターベンションが血栓溶解療法に優る有効性が損なわれることはない。