最近のサーヴェイによると、慢性疾患の進行が心不全の発生を増加させる場合が多いという。しかし、うっ血性心不全の診断法は何十年もの間、変わっていない。
心臓に由来する神経体液因子B型ナトリウム利尿ペプチドは心室から特異的に分泌される。この分泌は圧負荷、心室容積負荷、および心室壁の張力が増大することに反応して起こる。血中B型ナトリウム利尿ペプチドのレベルと心不全が相関するという報告はすでに多くある。
2000年には合衆国食品医薬品局はB型ナトリウム利尿ペプチドを診断薬として認可した。しかしながら、2001年のAHA/ACCガイドラインでは、うっ血性心不全患者に対するこの神経体液因子の役割は"いまだ十分には明らかにされていない"と述べられている。
正しく呼吸が行われない(Breathing Not Properly [BNP])国際協同試験は、呼吸困難を訴えて救急外来を受診した1,586例の患者を対象にした。血中BNPの測定には15分血液検査法が用いられた。
血液検査は卓上計算機くらいの大きさの機械(Triage BNP Test, Biosite, Inc.)によって行われた。本試験は、この急速BNP検査法が呼吸困難を訴えて救急外来を受診した患者の評価にどれほど有効かを前向きに検討した初めての試験である。
BNPは100pg/mLのカットオフで、感受性90%、特異性74%、正確度81.1%の精度で心不全と他の原因による呼吸困難を鑑別できることがわかった。
本試験の主要エンドポイントは診断的正確度と臨床的評価との対比であった。試験の結果からは、BNPの測定は臨床的評価よりさらに正確であった(81%
対 74%、P < 0.0001)。
多変量解析によって、BNPの測定は病歴、身体所見、胸部X線、その他の伝統的評価法に比して今後の経過予測力が有意に高いことが示され、診断能力を付加するものと考えられた。
Bayesian解析によって、確実な診断が困難であると感じている時にBNPの測定を1回行えばどれだけ診断効果が増加するかを検討したところ、1回の測定で臨床的誤診率を74%減少させることが示された。
心不全患者でBNPのレベルはニューヨーク心臓協会の心機能分類とよく相関した。
これらの結果に基づいて、心不全ガイドラインで心不全の臨床診断にBNPの測定を加える必要がある。
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