最適薬物治療の選択
Selection of Optimal Medical Therapy

Kanu Chatterjee
University of California
San Francisco, CA, USA


収縮機能の障害による心不全の臨床症状は容積負荷とうっ血症状であることが多い。この症状は利尿薬によって改善する。利尿薬の長期の使用は薦められない。Chatterjee博士は収縮不全に対する最適な薬物治療の系統的な選択法を詳述した。

Chatterjee博士は容積負荷とうっ血症状を改善するために利尿薬の使用を薦めている。利尿薬はノルエピネフリン、アンジオテンシン、バゾプレッシンなどのレベルを上昇させ、腎機能障害を増強し、電解質異常をもたらし、左室のリモデリングを促進するために長期間の使用は薦められない。

1度うっ血症状が消失するとジギタリス治療を開始する。状態が安定化した時点ではアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が第1に選ぶべき治療薬である。ACE阻害薬は心室リモデリングを抑制し、左右心室機能、症状、QOLを改善し、死亡のリスクを低下させる。Chatterjee博士はACE阻害薬の投与は低用量から始め、血清ナトリウムの測定を続けることを薦めている。ナトリウムのレベルが低い患者はACE阻害薬の投与によって低血圧を来す可能性がある。ACE阻害薬に対する忍容性が悪い時には、アンジオテンシン受容体拮抗薬が用いられる。

3者併用療法(利尿薬、ジギタリス、ACE阻害薬)で安定化が得られた後ではβ遮断薬が追加される。β遮断薬は、血行動態、左右心室機能、QOL、生存率を改善し、心不全の進行を低下させ、心室リモデリングを抑制する。

患者が容積負荷の状態にあり、ジギタリスやACE阻害薬に対する反応が悪い場合にはアルドステロン拮抗薬が用いられる。アルドステロン拮抗薬は拡張終末期容量と収縮終末期容量を減少させ、さらに心室リモデリングを抑制することによって血行動態を改善させる。アルドステロン拮抗薬を投与する場合には、血清のナトリウムとカリウムをモニターする必要がある。

β遮断薬に忍容性がない患者ではアミオダロンを開始する。アミオダロンで患者が安定すればβ遮断薬治療に切り替えることができるかもしれない。重症心不全で心源性ショック状態で、低血圧、頻拍、低拍出量を示す患者には左室補助循環装置が用いられる。

Chatterjee博士はそれ以外の治療法として、強心配糖体以外の強心薬とβ遮断薬治療の併用に触れた。Chatterjee博士はこれらの薬物は一緒に使わないほうがよいとしている。Chatterjee博士は強心薬と直接的血管拡張薬の併用は薦められないと述べた。考慮する余地のあるその他の治療法として、免疫調節療法、免疫グロブリン療法、B型ナトリウム利尿ペプチドなどを挙げたが、心不全におけるそれらの役割は明確ではないという。